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  山形県 朝日連峰の渓
  2021/07/22〜24


  平澤、斉田、安藤、上野、高野




Text & Photo   : 高野

今年も渓道楽に新人さんが入会してくれた。
安藤さんと上野さんの二人だ。
コロナ禍で思うように飲み会もできず、入会したいというメールをいただいてからもなかなか会えなかった。
そして7月も半ばを過ぎてようやく新人歓迎釣行に行くことができた。
行先は山形県の朝日連峰。まったく人の手の入っていない原生林と、清らかなジンクリアな流れ。
そして群れ泳ぐイワナたち。誰もが憧れる素晴しい場所だ。
高速道が伸びて20年前よりも車止めまでが近くなった。
林道の奥まで行きエンジンを止めると、辺りは静寂の闇に包み込まれた。

さて、夜が明けて、いよいよ源流へと出発する。
今回は4時間ほどの山越えルート。新人二人はおそらく経験のない山越えアプローチ。
めげずに行けると良いのだが・・・。
今回も沢を詰めて尾根に出て反対側の沢を下るという、よくあるパターンのもの。
始めは傾斜もゆるいのだが、徐々に渓は急傾斜になっていき、最後はズルズル滑る泥壁が待っていた。
やはり新人二人にはキツかったようで、最後の詰めはかなり大変そうだった。
見上げれば樹齢100年以上と思われるブナやミズナラが枝を伸ばしている。
耳をすませば野鳥のさえずりも心地よい。
二人にはまだまだ辺りを見る余裕はなかっただろうなぁ・・・。

装備はいろいろアドバイスはしていたが、それでも最初は何が不要で何が必要かがわからないので、ザックも重たくなりがち。特に安藤さんのザックは20kg近い感じに思えた。
それでもなんとか尾根まで上がり切り反対側へと下り、予定よりも時間は掛かったが無事に目的の渓へと到着した。

新人たちを間に挟んで、山越えアプローチの始まりだ。
最後の急登は泥壁&藪漕ぎ。
新人には厳しい山の歓迎だった。


大汗をかいた安藤さん。

余裕?のピース、上野さん。
ここから先もまだ長い!
今度は下りが待っている。

テン場は10分ほど上流に行った右岸にあるらしい。
もったいないのでそこまで竿を出しながら進んだ。

安藤さんはフライ、上野さんはテンカラ。古参の三人は餌釣りだ。
思い思いに竿を出しながら行くと、イワナが泳いでいるのが見える。
その先に餌を落とすと迷いもなく食いついてきた。まったく警戒心の無い無垢なイワナに我々は大喜び。
皆の様子をカメラに収めながら後ろから着いていくと、上野さんの竿が大きく曲がった!
いいサイズのイワナじゃない?
タモを出して慎重に取り込む。
早速メジャーを当てると、30cm! 見事な尺イワナだった。
上野さんも大喜び。人生初の尺イワナらしい。
彼はいつも奥多摩近辺の激戦区で釣りをしているらしい。ひっきりなしに釣り人の訪れる渓では、そうそう尺物なんて釣れるものではないだろう。
しかしここは朝日連峰。広大な無人地帯のど真ん中を流れる源流だ。訪れる釣り人も滅多にいない流れには、人間の姿など目にしたことのない無垢なイワナが群れている。竿を出してすぐに尺イワナが釣れる渓の豊かさ。素晴しい朝日連峰の自然に感謝。

テン場まで竿を出しながら行く。
ユラユラ〜。
パク!
上野さんのテンカラに来た尺イワナ。
人生初の尺イワナ!

今度は安藤さんのフライロッドがしなっている。
慎重に寄せて・・・。
おしくも尺はなかったけど、かなりのサイズ。
私の釣った尺イワナ。
斉田さんにも尺イワナ!

テン場の前は流れの緩やかな大きな淵になっていて、背が立たなそうなくらいの水深があった。
その深い淵を覗き込むと、いるいる! たくさんのイワナが群れ泳いでいた。どれもなかなかのサイズだ。
そこに私がエサを沈めてみる。
エサはゆっくりと底に沈み流れていく。すると群れているイワナの中から1匹がすーっと近づき、パクっと食いついた。
ガツンを合わせて岸へと誘導する。竿は大きく曲がって大物が掛かっているのがわかる。
しかし、岸は一気に深くなっていて上手く取り込めなかった。
斉田さんが得意のヘルメットタモですくってくれようとしたが、入らない。
「いいよ、いいよ。大丈夫!」
何を思ったのか私は糸をつかんで上げようとした。
プチッ・・・ イワナの体が半分くらい水中から出たところで糸が切れ、奴は流れの奥底に帰っていった。
「初心者かよ!(笑)」と斉田さん。
今のは間違いなく尺1寸はあったな・・・ もしかしたらもっとデカかったか・・・
ま、いいさ。また釣れるよ。

テン場を整地してタープを張ったのち、軽く上流へ釣りに出かけた。
そのすぐ上のポイントで私の竿に尺イワナが来た。
他の会員たちの竿にも良型が掛かっている。
この渓は相当魚影が濃い!
これは明日の釣りにも期待が持てそうだと、にんまりしながらテン場へと戻った。


昨夜は疲れていたので、あっという間に夢の中。
目が覚めると渓には朝日が差し込み、水面が輝いていた。
今日はできれば魚止めまで行きたいと思っている。
朝飯を食べてワクワクした気分でテン場を出発した。

出発してすぐ、平澤さんが釣り上げる。
リリースして住処に帰るイワナ。
好ポイントが続く流れ。

深場を泳いで突破する上野さん。
躊躇なく泳ぎだす彼は有望な新人だ!


キタキタ〜!
弓なりに曲がる竿!

フライを振る安藤さん。
安藤さんにも尺イワナが!





テンカラでも変わらぬ釣果。

エサでもフライでもテンカラでも、次々にイワナが釣れる。
まさに楽園だ。
やがて渓が狭まり連続した滝が掛かっている場所に差し掛かった。
両岸は切り立ち、滝を巻くにも取り付く箇所が無さそうに見える。
行くならまた泳ぎかなと思いながら竿を出していたのだが、なにやら遠くのほうでゴロゴロ言っている・・・
「なんか雷が鳴ってない?」
「うん、鳴ってる!」
だんだんと音が大きくなってきた。空も暗くなって雨もポツポツ落ちてきている。
「ヤバい! 急いで戻ろう。」
残念だが釣りはここまで。
土砂降りにでもなったら大変だ。テン場に戻れなくなるかも。
我々は大急ぎで竿をしまうと、駆けるようにテン場を目指した。


ここでも斉田さんが釣る。

引き返した滝。
次はここを越えて行こう!

幻想的な流れ。
雨上がりに川霧が出て日差しが差し込んだ。


なんとか大雨にも降られずにテン場に戻ることができて一安心。
今日も大自然の中で素晴しい釣りを満喫できた。
新人の二人にも尺イワナが釣れて喜んでもらえたし、古参の我々三人もそれぞれ尺物を釣ることができた。
なんと全員が尺イワナを釣り上げた。
源流でも全員尺というのは、なかなか無いことだ。
大満足の結果と言っていいだろう。

テン場では盛大に焚き火をして美味い料理を食べて、夜が更けるまで至福の時間だ。
またいつかここに来よう。
今度は魚止めの滝で40cmオーバーを釣り上げようとみんなで誓った。


夢のような3日間も今日で終わり。
下界を目指して出発する。

帰りはいくつかの滝を越える。

滑るので、お助け紐を出して安全第一で。

巨大なツキヨタケ。
ヌメヌメの滝を登る。

尾根まであと少しだ。

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