HOMEBACK
  山形県 朝日連峰 八久和川
  2018/07/13〜15




  高橋、斉田、福田、高野





Text & Photo   : 高野

山形県朝日連峰を流れる長大な渓流、八久和川。私の源流釣りの原点とも言える渓である。
その流れは険しく、容易に人を寄せ付けない。
しかし、その険しい流れをパスして一気に源流部に入るルートがある。
それが天狗角力取山を越えて八久和川の支流である牛沢を下降するルートだ。
牛沢を下降したのは忘れもしない19年前。川上さんに連れられて行ったのだ。
その後、2005年に再び訪れた。
そして今年、三度目の牛沢下降ルート。
今回のメンバーは高橋さん、斉田さん、福田さん、私の4名。
福ちゃん以外は50歳を大きく超えたオジサンたち。
前回は頂上まで5時間。そこから呂滝手前のテンバまで5時間というタイムだった。
だが、今ではすっかり中年になってしまった自分に行けるのだろうか。

早朝の大井沢登山口を出発した我々は、ヒーコラ言いながらも順調に進んだ。途中の水場を過ぎ、やがて涼しい風が吹き抜ける尾根道となる。ここまでくるとようやく斜度も緩くなり、少しは楽ができる。
森の中の登山道を抜けて雨量観測所を左手に見ながら進む。記憶では頂上への最後の登りはもっと見晴らしがよかった気がするのだが、両側の灌木が伸びて視界がきかなくなっていた。13年の月日を感じた瞬間であった。
そして、最後の登りを終え、ようやく天狗頂上へと立つことができた。
ここに来るのは5度目となる。牛沢下降2回、岩屋沢下降2回。アプローチは毎回辛いが、どれも思い出深い釣行だった。
さて、ここで昼飯を食べて、残るは牛沢の下降だ。

記憶にある鞍部から登山道を右に折れ藪漕ぎをすれば、なつかしい牛沢の流れに行き当たる。
しかし、ここからがまた長かった。今回の誤算は牛沢のヌメリ。ラバーソールの沢靴が滑る滑る。
おかげで思ったよりもペースが上がらず、前回よりも1時間近く余計にかかってしまう。
八久和川の本流にたどり着いたところで10時間が経っていた。
予定では呂滝下のテンバを目指していたが、今回は水量も多く本流に出たところのテンバに泊ることにする。
このテンバに泊るのは初めてだが、とても良いテンバだ。
正直、ここにテンバがあってホッとした。

明日は呂滝を越えて、できれば魚留を目指したい。
八久和川初日の夜は盛大な焚き火と宴の歓声とともに、更けていった。

天狗角力取山への急登を行く。
このくらいなんてことないさ〜。
美味い!
ようやく稜線に出た。涼しい風が心地よい。
天狗小屋が見えたぞ!
天狗の土俵で。
牛沢下降。
ようやく八久和川本流に到着。
今宵の宿。
広くて平らな最高のテンバ。

鶏肉のマヨ炒め。
アスパラベーコン。

昨夜はあまりの疲れに全員が早くに撃沈。ぐっすり寝て疲れも少しは癒えた・・・とは言えないが、今日はいよいよ八久和川の核心部「呂滝」へと向かう。
呂滝は数々の大物伝説の残る滝。源流釣りをする者で呂滝を知らぬ者はいないであろう。
瀬畑翁は52cmの大イワナを釣り上げたことがあるそうだ。
我々も50とは言わないが40くらいの大物を釣りたいなぁ。そんな気持ちを胸に、4人は勇躍上流へと向けて出発した。

幸いにも昨日よりはだいぶ水位が下がっている。それでも水線通しで行くにはちょっと辛い。おかしいな、こんなに苦労した覚えはなかったのだけど。それでもみんなは竿を出しながら、嬉々として進んでいく。
広河原に出る直前のいかにもなポイントで、私の竿に待望の大物が来た。
サイズは33cm! これが八久和川でのアベレージサイズ。
今回の八久和川釣行には目標がある。第一は全員尺を釣ること。第二は40オーバー!
まずは目標達成の第一歩だ。

まずは尺一寸が出て幸先良いスタート。
その後もみんなの竿にアタリが続く。しかし、なかなか尺に届かない。
皆には「八久和川に行けば尺物バンバンだぞ!」って言っちゃったから、なんとか釣れてくれないとウソつきになってしまう(笑)
広河原を釣り上がって行くと斉田さんにも尺物がヒット!
よし、これで二人。
ぜひとも高橋さん、福ちゃんにも釣ってもらいたい。

丁寧に竿を出しながらテンバから2時間。見覚えのある砂地があった。
過去2回泊ったテンバだ。
ということはこのカーブを曲がれば・・・
我々の目に憧れの呂滝の雄姿が飛び込んできた!
私以外の3人には初めての呂滝。彼らの目にはどう映っただろうか。

呂滝では斉田さんが持ってきたルアー竿の出番。代わる代わるルアーを投げたが、大物が追っては来るものの、残念ながらヒットは無し。
30分ほど粘ったがあきらめて右岸のザレ場を巻きにかかった。

早速、釣り上げた高橋さん。
昨日よりは減ったが、まだ水量が多い。
ポイントだらけ。
広河原に出たところで、私に尺一寸!
精悍な顔つきのオスイワナ。
野生の面構え。


雄大な流れを釣り上がる。
























斉田さんにも尺イワナが出た。


























福ちゃんのフライにも。

























次々にイワナがヒット!
さすが八久和川だ。

いいイワナだ。

聖地 呂滝。
源流マンたちのあこがれの地。

のべ竿じゃとてもじゃないが歯が立たない。
来い潜水艦イワナ。


無事に呂滝上流に降り立った我々は、再び各々で竿を出しながら行く。
しばらく行くと左から滑滝となった湯ノ沢が出合ってくる。
「あれ、ここの出合ってこんな感じだったかな? もっと浅かった気がするんだけど。」
久しぶりで忘れたかと思ったが、帰ってから過去の写真を見てみたら、やはり出合は浅瀬になっていた。
どうやら以前は膨大な量の砂に埋もれていたようだ。それが大水で流されて、今は深い淵になっていた。

近づいてみると、真ん中には大岩が沈んでいて素晴らしいポイントになっている。
ここは絶対に大物がいる。そう確信した私は左岸から攻めてみた。
まずは手前に沈めてみたが反応なし。少し奥に進み2mほどの岩に登ってみる。
上からそっと覗くと、澄みきった深い底には尺を優に超える大イワナがユラユラと泳いでいた。
「デカイぞこりゃ!」
たぶん尺じゃきかない。尺2寸、いやもっとデカいかも。
私はオモリを3Bにして、そいつの数メートル上流に仕掛けを投げ込んだ。
ゆっくりと餌がそいつの前に流れていく。「食え!」
無視された・・・。
しつこく流す。しかし食わない。
そうこうするうちに、やがて大イワナの姿が消えた。
「くそ〜!」
でも、まだ諦めないぞ。

斉田さんも右岸側から何度も流している。
高橋さんと福ちゃんは滝を巻こうと左岸の斜面を登って見えなくなってしまった。
私は諦めずに同じコースを何度も流した。すると仕掛けにかすかな反応が!
軽く上げて聞いてみる。
イワナ特有の「グ、グ、グッ」という反応が返ってきた。
少し待ってガツンと合わせた。しかし、そんなに重たくない。
残念ながら上がってきたのは8寸程度のイワナだった。他の渓流なら8寸でもじゅうぶん嬉しいけど、ここは天下の八久和川だ。お前じゃないよとリリースして、私はさらに数メートル上の白泡の中に仕掛けを投げ込んだ。
最初は空振り。そして2投目に仕掛けが止まった。
根がかりか? そう思って少し上げてみると「グングン!」という反応が手に伝わる。
ガン!と合わせて竿を立てる。
「来た! デカイ、デカイ!」
先の8寸とは比べ物にならない重たい引き。間違いなく大物だ。それも尺なんてもんじゃない。
竿をタメながら下流へと誘導する。
水中で暴れる影。
高橋さんが戻ってくるのがチラっと見えた。
「タモ! タモ! 高橋さん!」

その声を聞いた高橋さんが大声でタモを持つ福ちゃんを呼んでくれた。
福ちゃんの構えるタモにそいつを誘導する。
無事にタモに収まった39cmの大イワナ。
「やった〜!、ついに八久和川の大イワナを仕留めたぞ。」
40cmにはわずかに届かなかったが、尺3寸は立派な大イワナだ。
天にも昇るほどの嬉しさだった。

39cmを見た全員がテンションMAX。
湯ノ沢の滑滝をヌメリに注意しながら越えて、八久和川の本流へと乗っ越した。

右岸から呂滝を巻く。
呂滝を巻いて源流そうめん。
美味すぎる!
湯ノ沢出合で最初に来た8寸。
粘りに粘ってついに釣り上げた39cm!!

デカイ!

もちろん湯ノ沢の先も、まだまだ好ポイントが連続する。
どんどん釣り上がって行くと泳がないと進めない場所が。
なんとか左岸をヘツって行ったのだが、急激に狭まったところで泳いで右岸に行かないと進めない。
しかし流心の流れはかなり急。
斉田さんが水中の岩を蹴って対岸へと泳ぎ切った。
続いて高橋さん。
高橋さん、意を決して飛ぶ。だがしかし飛ぶ方向が真横・・・
案の定、流心を越えられず押し流されて、サヨウナラー。
ひと泳ぎしてまた戻ってきた、高橋さん。それもう一回! 今度は対岸に届いた。
残る私と福ちゃんも無事に渡りきり、再び竿を出す。
ここまでくると魚影はどんどん濃くなってきた。
次々にイワナが掛かる。でも尺には届かない。

トロ場で福ちゃんがフライで遠投。
みんなの注目の中、ゆっくりと流れてくるフライにバシャ!とイワナが出て歓声が上がる。

次は高橋さんと福ちゃんにダブルヒット。
そして大場所で斉田さんの竿に大物が!
やった、来た! と思ったらまさかのバラシ。
これには全員から「あぁ〜!」とため息が漏れた。
惜しかったなぁ、あれは絶対尺2寸以上あったよ。

さて、楽しかった時間も残りわずか。
そろそろ戻る時間が近づいてきた。
最後の大場所で斉田さんが粘るも、そこではアタリ無しだった。
「さて、ここらで戻りますか!」

帰りも呂滝にちょっかいを出すも、惜しいところでフッキングならず。
日も傾き始めて長い影が河原に伸びる中を、渓道楽の4人はテンバへと引き返すのだった。

そして八久和川最後の夜。焚き火を囲んで高橋さんの握ってくれたイワナ寿司を食う。
空には久しく見たことも無いような満点の星。
楽しかった釣行を振り返り、笑い声がこだまする。
今度はカクネに行きましょうよと、誰からともなく話が出た。
「よし、来年はカクネで40オーバーだ!」
焚き火を囲みながら来年の目標が決まった。
今度こそ全員尺、全員40オーバーの夢をかなえよう!

湯ノ沢出合を越えて上流に降り立つ。
大場所が続く本流。

福ちゃん、フライの遠投で見事ゲット。

福ちゃんのフライを咥えたイワナ。
次々にイワナが掛かった。
さすが八久和川。豊かな自然が残る渓。


ダブルヒット。
はい、二人並んで、カシャ!
あー!


水量が多くて大変。

残念ながら、ここらで時間切れ。

遊びつくした満足感を胸にテンバに急ぐ。


























日は傾き長く伸びた影が写った。

さあ、宴会、宴会。
まずは揚げナス。


イワナ寿司、最高!

骨のから揚げ。

盛大な焚き火を囲んで、夜が更けてゆく。

八久和川をバックに記念撮影。
流れの中に出ている白い岩。初日は完全に水没していた。



























牛沢から見る本流方向。

ヘイヘイヘーイ!

























メッチャ滑る、真夏の牛沢を行く。
まだまだ先は長い。

頂上に着いた!
あとは下るだけ・・・、なんだけどまだ長〜よ。

また来るぞ〜!
たぶん。いや、もしかしたら(笑)


 HOMEBACK