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  新潟県 笠堀大川
  2016/08/06〜07



  八木さん、大串さん
  斉田、福田、高野









Text   : ジョニー
Photo   : 高野

俺の名はジョニー。新潟県の笠堀大川に住むヤマビルだ。
仲間は俺のことを「ヒル下がりのジョニー」って呼んでいる。
日がな一日、山の中で獲物が通りかかるのを待つ気ままな生活をしている。
気ままな生活といっても冬には数メートルの雪が積もる、過酷な場所だ。
そんな冬は落ち葉の下でじっと冬眠して、暖かくなるのを待っている。
暖かくなると通りかかったシカやイノシシなんかに飛びついて、美味い食事にありつくのさ。

普段は獣しか来ない山奥だが、雪が消えて初夏を過ぎたころになると、極々たまに人間っていう二本足で歩く獲物がやってくる。
そいつらときたらほとんど毛が生えてなくて、血が吸いやすい。
おまけに普段はそうとういいもの食ってるらしくて、極上の血なんだ。
だから俺は人間の来るのが待ち遠しくてしかたない。

今年もそろそろ、やつらのやってくる季節になった。
たっぷり美味い血を吸わせてもらうぜ!

お、来た来た。どいつに吸い付くかな。二番目のやつが美味そうだ。
もぐりこんでゆっくり吸わせてもらうぜ。

それにしても重たそうな荷物背負ってるじゃないか。

「八木ちゃん、酒はいっぱい持ってきました?」
「もちろん、売るほどありますよ!」

やっぱり酒か。
ここに来る人間は必ず酒をたっぷり持ってくるんだ。血より美味いのか?
ま、俺には関係ないけどな。

どうやら森から出て河原を行くようだな。
おいおい、泳ぐのかよ。
俺は水は好きだが、多すぎるのはちょっとな。
流されないようにしっかり吸い付いてないと。

なんとか流されずにすんだぜ。それにしてもだいぶ歩いてるが、どこまで行くつもりだ。
お、やっと着いたみたいじゃないか。
ここは確か大川と光来出川の出合いだ。ずっと前に人間にくっついて訪れたことがある。
出合いはちょうどいい泊り場みたいだな。

「うわっ、またアブに噛まれた!」
「すごいアブですね。やっぱり夏の渓はダメだ〜。」
「あ〜、しつこい!!」
「助けて〜」

おーおー、かなりやられてるじゃないか。
俺以外にも人間の血が好きなのがいるんだよな。
中でもメジロアブのやつらのしつこさと言ったら、さすがの俺もだじだじだ。

「設営終わったし、釣りに行きますか!」
「よっしゃ、釣るぞ〜」

どうやら人間たちがここに来る目的は、釣りという遊びのためらしい。
そんなことのためにご苦労なこった。俺はごめんだね。

ジョニーというのは俺様のことだ!
酒は売るほどありますよ!
8月の炎天下、河原を行く。
倒れそうな暑さだ。

泳ぎを前にパッキングを確認する福ちゃん。
泳いで取り付く大串さん。

























暑いから泳ぎも気持ちがいい!
だが水面から出た顔にアブの猛攻が!


























テン場を目指してひたすら歩く。


「イワナ、泳いでる?」
「いや、全然・・・」

どうやらイワナがいないって騒いでるようだな。
そらそうだ、こんな暑いんだから、イワナも昼寝してるさ。

それにしても、釣りにもいろいろあるんだな。
ほっかむりしたオッサンは白い虫つけて釣ってるな。
若いのと白シャツはジージー言う短い竿を振ってるし、白タオルのは長い竿に毛ばりか。
それにしても白タオルのは、アブの群れてる中で半袖とは恐れ入ったぜ。
あとはカメラ持ったオヤジだが、こいつは釣りしないのか?
さっきから写真ばかり撮ってるぞ。

おっとこの先はゴルジュだぞ。
また泳ぐのか。
こんな深い淵、あきらめて引き返せばいいのに。
物好きなオヤジたちだな。
やれやれ、また水に入るのか・・・

お、今度はオレンジのほっかむりが一人で先に行ったな。
ハハハ、やっぱり釣れないようだな。

「ダメですねぇ〜。」
「さっき尺上のが1尾だけ泳いで行ったけど、少ないのかな。」
「あきらめましょうかね。」
「そうしましょう・・・」

やっとあきらめたか。
さあ、さっさと戻って宴会でもしたほうがいい。
もうタップリ血を吸ったから、靴下の中に隠れて、また明日ごちそうになるとしよう。

音滝に竿を出す八木さん。
ここでもまったく音沙汰無・・・。

エメラルドグリーンの深い釜がある音滝。
右岸から音滝を高巻く。
この上はきっと釣れる・・・はず。


どこまでも透き通った美しい流れ。
アブ避けのほっかむりをして竿を出す、斉田さん。

ダメだ、釣れない。
エサがダメならフライで。
静かに竿を出す福ちゃん

真剣な眼差しの福ちゃん。
釣ってくれよ〜。


福ちゃんがダメなら大串さんがフライで攻める。

エメラルドグリーンの深い淵。
普通ならこういう淵にはイワナが泳いでいるのだが。


























まだまだゴルジュが続く。
そしてイワナはいない。


一人先まで行って竿を出す斉田さん。

突然上がる水しぶき!
大イワナか?!

はたまた河童か?

ほっかむりオヤジの斉田さんでした。

全員ボウズ!
放心状態のオッサンたち。


テン場に戻ってゆっくりしたいのだが、アブの猛攻に疲れてしまう。
ふつうは夕暮れとともにいなくなるのだが、ここのアブは暗くなってもしつこく居座った。
ようやく静かになったのは夜の7時過ぎだった。


ふ〜、良く寝たぜ!
人間どももそろそろ起きたようだな。
話を聞いていたら今日帰るようだ。
せっかくのごちそう、もう少しゆっくり味わいたかったが仕方ない。
また次の人間を待つとしよう。

「おわ! なんだ? カモシカがテン場を駆け抜けていったぞ!」
「びっくりしたなぁ。ドドドッって聞こえたから振返ったら、カモシカだよ。」
「さすがカモシカ生息地って地図に出てるだけあるね。」
「熊じゃなくて良かった〜。」

おいおい、カモシカぐらいでビビるなよ。
お前ら何度も山に来てるんだろ?
まったく、人間てのは・・・。

「じゃ、行きますかね。」

さてと、俺も朝飯とするかな。

また来いよ、人間たち。

吸血鬼の餌食となったオッサンたち
左から、高野、斉田さん、福田さん、大串さん、八木さん


























アブの猛攻を受けながら、帰り道を急ぐ。
この後の藪漕ぎで全員が熱中症に。
もうヘロヘロになって帰還。
大した距離歩いてないんだけどなぁ。

帰り道、ハチにも刺されて
泣きっ面にハチとはこのことだ。
今回は害虫だらけの釣行だった。
美味かったぜ。
もう腹いっぱいだ。
 
あばよ!

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