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 山形県 八久和川
  2008/07/19〜20


  八木さん
  田辺(渓道楽)






Text : 田辺
Photo: 八木さん

突然ですがみなさん、「あ〜、鳥になって大空を自由に飛べたらいいなあ・・・。」って思ったこと、長い人生一度や二度くらいはあることと思います。そういえば、ライト兄弟ってすごいっすよね、実際あの時代に空を飛んじゃったんですから。(笑)
何年か源流釣りなんてことやってると、「空を飛べたらテンバまでラクだし」とか「宝くじで3億円当たったらヘリでテンバ、おまけにバドガールが生ビールをついでくれたら・・・」てな妄想を抱くのは僕だけではないと思うのですが・・・。
実はですね、最近ちょっとした出来事がありまして、心底鳥になりたいな〜、なんて思ってるんです。僕らの世代の卒業式定番歌「翼をください」。改めて言うのもなんですが、いい歌だなあ・・・。(なんか変爆)
何があったか知りたい方は、是非渓で一緒に焚き火を囲んで語り合いましょう。教えてあげる・・・かも。(笑)

今回は天狗越えってことで釣り屋にとっては結構ハードな遊びです。会員はじめ仲間達にも声を掛けましたが、2泊の日程を簡単に取れるほど、今の日本社会は大らかではないようです。
そんな中手を上げてくれたのは静岡県は藤枝の地にしっかりと根を張る3児の父。家庭はもちろん、仕事に、遊びに常に全力投球の心優しく熱い男、八木大輔。僕がもし女なら絶対惚れちゃうな。(あくまでもオンナだったらですよ、変な趣味はないですから・・・。〔爆〕)
彼との天狗越え(天城越えじゃないっすよ。(爆))なら苦しい山越えも笑い飛ばしながら遊び尽くせることだろう。

静岡から遠路はるばるやってきた八木大輔

「ハアハア、ゼイゼイ、ウオリャ〜!!!」そ〜んな甘ちゃんな思いはアプローチの序盤ですぐに吹っ飛んでしまいました。なにせ3連休の登山道車止めは銀座を思わせる程の車が。すべては釣りではないにしても、さすがの出谷川のキャパをもってしても釣りはおろかテンバの確保も心配になる程でした。
ということは必然的にいつものマッタリペースになるはずはなく、体育会時代の夏合宿を彷彿させるような山行に・・・。道中ゲロッパの危機も危ぶまれる程の苦しい歩きの甲斐あって、結果的には結構なペースで1等地のテンバを確保できたのですが、苦労して行き着いたそこはとても天下の出谷川の流れとは程遠い渇水。おまけに至る所に釣り人のタープと足跡が・・・。
「八木ちゃん、予想通りだけどこれじゃ釣りになんないね〜。」ってなことで朝から宴会に決定!。(自爆)
まあ、こんなことはしょっちゅうあることなんですが、さすがに天狗越えの達成感に浸りながらの朝から飲む量としては、持参の2Lビールと500mlのスコッチでは2泊分も足りるはずもなく、協議の結果1泊に変更(爆) 酒が切れたら即帰るのは渓の師匠である故川上顧問とお誕生日が一緒だからでしょうかねえ・・・。(笑)

これじゃあ持参の酒もあっという間に底をつく
テン場に付いたら、なにはともあれ酒を冷やす!
もっと持ってくりゃあよかった・・・

朝ビールで乾杯後、一睡もせずに遠路静岡からやってきた八木ちゃんは程なくして意識を失いました。僕も眠いのは一緒ですが、そこは釣りクラブの快腸です。竿を出さずに帰るわけにはいかないので、寝不足の酔っ払い千鳥足で釣りに向かったのですが、なかなかシビアな釣りを強いられてとても絵になるようなオサカナさんは顔を出しませんでした。

いつの間にかスコッチにも手を出し、川原でうたた寝していると突然「うわっ!」とほとの声がしたので飛び起きるとどこかで見覚えのあるお顔・・・。
その声の主はなんとなんと、知り合いの友野さんでした。「なんだよ〜、人だらけでつり下ろうとしたら岩陰にいきなりぶっ倒れてるヤツがいたからびっくりしたらオマエかよ〜!。」連れが八木ちゃんであることを告げるとしばし源流情報交換。「今年はアソコが穴場だぞ」とか「アノ場所は40オーバー連発だぜ。」と景気のいいお話を聞かせていただきました。友野さん、お話は信用しますので来年は40オーバーの渓にご一緒させてくださいね!。(笑)
しばし再会の談笑のあと、周囲も薄暗くなり、そろそろ焚き火の場所に移動しようかな、なんて思ってたら下流からオサカナをぶら下げた屈強そうな、いかにも源流マンっぽい二人組が・・・。僕はすぐに森さんだってことが判ってたんですが、あえて知らぬふりをして「こんにちはあ」とお互いに感じの良い挨拶のあとちょっとした情報交換。「森さんの車が止まってたの知ってたんですが、まさか岩屋に泊まってるとは思わなかったんですよねえ。」と言うと「あああっ!、これはこれは久しぶりいいい!」と満面の笑みを浮かべて両手でがっちりと握手。そうなんです、森さんとはかれこれ7、8年も前にMOOK本「源流への旅」の取材の時に川上さんや中尾さんはじめ、源流のスペシャリスト達と葛根田川の山越えにご一緒して以来の再会でした。まさかあんなに昔のことですから僕ごときのことなんて忘れてるだろうな〜、なんて思っての最初の声掛けだったのですが、詳細に覚えてくれていて感激!!!。
おまけに釣果が芳しくない僕達を気遣って良型の刺身用にキープした貴重なオサカナもちゃっかりといただいてしまいました。森さん、来年是非○○○川の山越え連れて行ってくださいね〜。(笑)

薪を集めて焚き火の準備
今夜もやるゾ〜
一応は竿を出す
一応ね(笑)
八木ちゃん料理中
森さんと思わぬところで再開
達人森さんのおかげで刺身が食える!
森さん、ごちそうさまでした!

いやいや、源流銀座の岩屋テンバも美人ホステスさんにこそ出会えませんでしたが、すばらしい再会を果たせた僕は大満足。夜のメインの焚き火も思いっきり盛大なものとなりました。
僕にとっての源流釣りは、当然のことながら野生の岩魚を釣るために難行苦行を乗り越えて、時には会社や家族のヒンシュクを買ってまでわがまま言ってやってきているのですから、岩魚がいない場所では話になりません。でも、たとえオサカナは釣れなくても気心知れたメンバーで焚き火を囲んで酒を飲み交わせばそれで下界のストレスなんて吹っ飛んでしまうのです。単に焚き火とはいってもキャンプ場のつまらない出来合いの薪を使ったキャンプファイヤーを前にしては、本当の自分なんて見つめられない変わり者の天邪鬼です。やはり苦労して集めそろえた広葉樹の天然の薪はなぜかやさしくあたたかい炎で、1日の遡行で疲れた身体を癒してくれるのです。そして漆黒の闇の中に赤々と燃える焚き火を前に最高の友人達と杯を交わせば、そこはどんなに高級ホテルのバーで飲むよりもまっさらな裸の自分と向き合うことができ、過去やこれからの人生の事などを恥ずかしげもなく語り合い、時には笑い、時には涙するのです。最高だよ、源流酒場は!。
パチパチっという薪のはじける音で目が覚めた。まだ夜が明けていないというのに昨夜一足先にシュラフにもぐり込んだ八木ちゃんが火を起こしていた。
僕もいつの間にかシュラフに潜り込み寝てしまったようだ。時間はまだ4時だが、朝氷結をちびりちびりとやってしまう。今日はまた過酷な登り返しが待ち受けているとは思えない、ノ〜天気なふたりは残りの焼酎とスコッチも飲み干し、ガッツリと朝飯を平らげ、ほろ酔い気分で午前7時にテンバを後にした。帰り際に「川上さんと斉藤さんにお祈りしようぜ」ってことで、八木ちゃん持ち合わせの蚊取り線香を本物の線香に見立てて手を合わせました。「今年もまたちょびっとだけだけど成長したと思いますよ、僕の周りの仲間達とは相変わらず仲良くやってますよ!川上さん!。」「天国でも焚き火で炊いた特大のおにぎりを食ってるかい!斉藤さん!。こんど夢に出てきてマイタケの木を教えてちょ〜だいね!」
僕の天狗越えはまだ終わりそうにありません。

素晴らしき源流酒場!
美しい八久和岩魚
天狗の頂上で
最高の友と


八木ちゃんの釣行記

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