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 福島県 会津大川
  2006/04/08〜09


  岩田、田辺、伊藤、渡辺、永田、松井、村川、
  近藤、小林、高橋、森、荻野、篠原、高野






Text & Photo 高野

 2006年のシーズンも解禁になって早一ヶ月。例年のように渓道楽の釣行会が催された。今回の舞台は2004年と同じ福島県会津の渓、会津大川水系である。
 我々のグループはナベちゃんのリクエストで鶴沼川に決まった。この鶴沼川は8年位前までは比較的多く通った川である。大釣りをした記憶は無いが、全然釣れなかったという記憶も無い。言ってみれば平均点の川だろうか。我々のグループはナベちゃん、荻野さん、篠原さん、私の4名で、普段からよく一緒に釣行しているメンバーたちである。
目覚めたばかりの渓
河原にはまだ雪が残る

 夜明け前に鶴沼川沿いの空き地に到着し、一杯やってから仮眠をとる。やがて夜が白々と明け始め川面が見えるようになってきた。この辺りは人気河川でもあり釣り人も多いので、明るくなると同時に着替えを済ませて川へと降り立つ。幸い寒さは心配していたほどではなかったのだが、それでも山は冷えている。河原にはまだ雪が残り、春はもうしばらく待たなければならないことを実感する。
 逸る気持ちを抑えて仕掛けを繋ぎ、今シーズンの第一投を流れに沈める。もちろん思っていた通りの展開で、まるでアタリが無い。激戦区の里川で釣るのは何年ぶり?と忘れてしまうくらい間が開いていて、誰でも釣れる源流のイワナ釣りが染み付いてしまった腕では、自然に流すこともままならないのだから無理も無いだろう。こういう川でポンポンと釣る達人たちに我々4人が敵うはずも無かった。
 そんな状況の中で右岸から支流が出合うポイントでナベちゃんがヤマメを掛けた。しかし、腹に掛かったスレ掛り。写真に収めるべく魚体の砂を落とそうと流れに漬けたとたん、ヤマメはナベちゃんの手からスルリと抜け出し流れに帰ってしまった。







冷たい流れに立ちこみ竿を出し、繊細なアタリを逃さぬように竿先に意識を集中させる


 しばらく釣りあがるも全く魚信もなく、あっというまに集中力も途切れ場所換えする4人であった。

 次なる場所はもう少し車で奥に入ったところ。雑木林を抜けて川に降り立つと、そこかしこにフキノトウが顔を出している。渓はようやく冬が終わり春を迎えようとしていた。遠くに見える峰々にはまだまだ雪が残っているが、河畔にはネコヤナギが膨らみ、遅い春の訪れを告げていた。

 そしてここでも誰の竿にもアタリは無く、フキノトウを採っただけで引き上げることに・・・。

← 一生懸命竿を出すが、相手にしてもらえなかった
      Photo By Shinohara
カンゾウ
土の中にナイフを差込み切り取る

 次に向かったのは鶴沼川本流のさらに上流部である。ここは以前に実績のある場所で期待は持てるのだが、いかんせん水量がかなり多い。平水よりもだいぶ水位が高く、この状況ではどうだろうかといったところであった。
 先ほどの支流よりも緩い流れのポイントも多いが、どうにも魚の活性が低いのか、はたまた腕が悪いのか、またもやアタリ無し。
 先ほどから吹き出した冷たい風のせいでさらにやる気も失せ、早々に斜面に群生していたカンゾウ採りに夢中になる。カンゾウは初めて採る山菜で味噌汁の具やカンゾウ味噌といった料理が良いらしい。とりあえず小袋一杯に採って車に戻る。

 車に戻ったはいいが時刻はまだ9時にもなっていない。日帰り温泉もやっているか分からない時間で、当然宿に入るような時間でもない。
釣れない釣りにさっさと見切りをつけ、カンゾウ採りに夢中になる私
Photo By Ogino
鶴沼川本流を釣る2人
Photo By Ogino

 さてどうするかと短い協議の後、二岐川にでも行ってみようと車を走らせる。曲がりくねった道を登っていくと温泉街の先で行き止まりに。車を止めるところもないので、Uターンしてもっと下の路肩に駐車し、除雪の終わっていない林道を歩いて、橋のところから入渓した。

 二岐川は先ほどの川と違って山岳渓流の趣きを持った落差のある渓である。こういった渓ならば普段釣っている渓に似てポイントも明確。しかし先ほどよりも残雪が多く、遡行には苦労させられる。下手に足を乗せると雪を踏み抜いて怪我をしかねない。なるべく雪の無いところを歩いたが、どうにもならないときは慎重に確かめてから体重を掛けた。

 そんな苦労をしながら釣りあがるも誰の竿にも魚が掛からない。しかし、ようやくその沈黙が破られた。全く釣れない釣りに終止符を打ったのは、やはりナベちゃん。落ち込みから6寸くらいのイワナを引っ張り出した。
「カワムシだよカワムシ。カワムシに換えたら一発だよ!」と笑顔でアドバイス。
 やっぱり横着してブドウ虫なんか使ってたんじゃスレた魚は見向きもしないのか? と冷たい流れに手を突っ込み、石をひっくり返して虫を採り鉤に付ける。それを静かに流れに投入したのだが、何度やってもアタリ無し。どうやらここの魚とは相性悪いようである(相性じゃなくて腕だろうが)
 そんな釣りに飽きて、三脚を引っ張り出し撮影に没頭する私。アングルを変えたりシャッター速度を変えたりと、こっちのほうが楽しかったりもする。

ようやくナベちゃんが釣り上げた
清冽な二岐川の流れ


















水際には春の使者が顔を出していた

 撮影に夢中になっているとポツポツと冷たいものが顔に当たった。とうとう雨が降ってきたようだ。先ほどから空は暗く、雪雲のような分厚い雲が空一面に広がっていたので、ヤバイなぁとは思っていたのだが。

 全然釣れないし、風は冷たいし、さらには雨までとなれば、泣きっ面に蜂。荻野さんと二人で目の前のガレた斜面を登り引き返すことにした。
 が、そんな軟弱な2人を尻目に、まだまだ粘るナベちゃん。その粘りに山の神も負けたのか、彼の竿に良型のイワナが掛かった。
「釣れたよぉ〜」と下のほうから声がしたのだが、すでに斜面を半分以上登っていて、さらには雨は本降り。「早く上がってこいよ〜」と声を掛け、登り切ったところでナベちゃんを待つ。
 ずぶ濡れになって上がってきた彼の手には泣尺の綺麗なイワナが握られていた。

 車へ帰る途中で雨はみぞれになり、バーンっと一発雷鳴が轟いた。春を告げる雷なのかもしれないが、気温はグングン下がって真冬並の天候となってしまった。もうこんな状況では「次はどこ行く?」などと言う輩は一人も居ない。
 4人の心はすでに温泉と宴会にあった。こうして4人の解禁釣行は終わったのである。


湯之上温泉「新湯館」の玄関にて

今回も大変お世話になりました
アサツキ






一晩明けたら山は真っ白だった


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