HOMEBACK
只見川水系支流

2003.09.26

田辺、中村




Text  :中村 敏之
Photo :中村 敏之

 渓道楽の名物男と言えばナベちゃんこと田辺哲。彼は会社でドバミミズなぞを捕っていたのがバレて上役の逆鱗に触れたのか、渓流釣りが出来ないよう東北から遠く離れた神戸に飛ばされてしまいました。でもそこは東北の渓をこよなく愛するナベちゃんです。会社の仕打ちをものともせず、新幹線を駆使して昨年は他の会員の誰よりも足繁く東北の渓へ通いました。が、今年は仕事が忙しかったと見え全く源流行が出来ず、相当ストレスを溜めていたようです。

 他の会員が渓に行くのを横目に耐えること数ヶ月、このままでは釣りをしないままシーズンが終わってしまう事に気付いて愕然としたナベちゃん、禁漁間近になって何とか暇を1日捻り出し自宅から近い会津へ日帰りで山女魚釣りに行くことにしました。(ナベちゃんの本当の家は栃木の黒磯にあります)

 約束の日の晩、ナベちゃんの家まで迎えに行きますが、『元祖雨男』の本領発揮なのでしょうかザーザー降りです。でも釣りの神様にも情けというものがあったのでしょう、空が白み始めると共に小降りになり、夜が明ける頃にはすっかり止んでしまいました。お陰でどの沢も水量が増えて、釣りには絶好のコンディションになっています。

小雨がパラ付く中、竿を出すナベちゃん

 事前に地図で目星をつけておいた川をいくつか回ってみます。3つめぐらいに回った川は一見何の変哲も無い里川に見えますが、中々侮れないものを感じます。暫く上流方向へ走ると期待に違わず大物の気配を濃厚に漂わせた堰堤を発見しました。それを見たナベちゃん、「もう辛抱たまらん!」状態になってしまったので、一発目はここに決定です。
 一旦、下流方向に戻って入渓します。いそいそと準備を整えたナベちゃん素早く川に入ると竿を出します。と、さっそく何やら釣れている様子。期待した通り、川の規模の割に魚影は濃いようです。それを見て私も続けて竿を出します。2投、3投と筋を替えて流すとツンツンとアタリが来ますが、どーもハヤのようです。アワセをくれても魚が小さいためか鉤掛かりしません。やっぱりそうは甘くないようです。(ホントにハヤなら触ると手が臭くなるので釣れなくていいのですが…。)

 この川は道路から見たのとは違って実際に立ち込んでみると、(雨上がりのせいでしょうが)思ったより押しが強くそして意外と水深もありました。そのせいで渡渉するのに意外とてこずらされます。でも実際に川幅は狭いのでどうしてもチョロ沢に見えてしまっている私は、不用意に流れを横切ろうとして深みにはまってしまいました。「アッ!」と思った時はもう遅く、ズブズブと体が沈んでいきます。別に危険なことはないのですが、ずぶ濡れになってしまいました。雨は止んでいるとは言え、どんよりと曇った寒空ですからこれは堪りません。

 ハプニングはあったものの、暫く遡行するといかにも魚が付いていそうな絶好のポイントを発見しました。逸る心を抑え付けるように餌を新しいものに取り替え、そっと仕掛けを振り込みます。すると期待違わずコツッとアタリが来ます。やはり魚は居ました。と、突然ガツンと激しい衝撃が襲ったかと思うと「パッチーン!」と大きな音を立てて仕掛けが穂先のところから切れてしまいました。「うおっ!なんだぁ今のは!?」「いったいどんな大きな魚が掛かったんだ?」と二人とも色めきたちます。

九寸山女魚を手にご満悦のナベちゃん

 私が新しい仕掛けを付けている間にナベちゃんに選手交代です。慎重に書掛けを投入して…、見事に一発で仕留めました。でも、思ったよりだいぶ小さな山女魚です。小さいとは言っても優に九寸はある立派な山女魚なのですが、何せ私の中では(おそらくナベちゃんも)バラした山女魚は既に尺二寸までに大きくなっていたからです。(爆)
 良く見ると鼻っ面に外側から鉤(だけ)がスレ掛かりしています。鉤を外してよく見ると私が使っているものと同じもののようです。と、するとこの山女魚は先程私がバラした山女魚と言う事になりますが、仕掛けはどこに行ってしまったのでしょう?それともここには鉤をくっつけた山女魚が二匹居たのでしょうか?謎のままです。

 興奮のひと時を味わった二人はその後大物が居そうなポイントだけに竿を出しハイペースで遡行し、いよいよこの里川の核心部・大堰堤にやってきました。右と左に分かれて大ヤマメを狙います。私は定石通り手前から探っていきますが反応無し。筋を替えて仕掛けを流してもアタリはありません。10や20は山女魚が居そうなのですが、堰堤下は沈黙したままです。と、突如反対側で釣っていたナベちゃんの体が緊張したかと思うと、銀色の光が水面を割って飛び出しました。良型の山女魚です。やっぱり居たのです。それを見た私も一段と気合を入れ、新たなポイントに仕掛けを投入します。と、またしてもガン、ガツンと激しいアタリ。(どうやら雨が降った直後で喰いが立っているらしいです)ぐい〜っと凄い力で竿ごと引っ張られますが、こちらも負けずと合わせをくれます。ところが、スッポーンと抜けてしまい鉤掛かりしません。2度3度と仕掛けを投入してもその度にガン、ぐい〜、スッポーンの繰り返しです。どうしても鉤のところを喰ってくれません。でも私があまりにしつこく餌を流すので山女魚も根負けしたのか、遂に鉤先に引っかかってしまいました。タモで慎重に受けると先程ナベちゃんが釣った山女魚と同じく九寸ほどある立派な山女魚です。二人とも当初の目的通りに良型の山女魚が釣れて大満足なのでした。ヨカッタヨカッタ。

大堰堤前のプールを攻めるナベちゃん こちらは別の川
そして堰堤があれば当然竿を出す 帰り道のお約束、
サンダル履きで堰堤に竿を出すナベちゃん

 HOMEBACK