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静岡県

2001年10月13日〜14日

コージさん、モーちゃん、中村敏之、高野智




Text :高野 智
Photo:中村 敏之、高野 智

 10月ともなると、山はすっかり秋の装いを纏い、渓は静けさを取り戻す。渓流釣りも約半年のシーズンを終えて禁漁期間に入るが、一部の河川ではまだ解禁している所もわずかだがある。
 ネット仲間のコージさんに「ぜひ、一度行きましょうよ」と誘われていたのだが、なかなか予定が合わずにシーズンも終わり近くなってしまったのだが、ようやく一緒に行けることになり、とても楽しみだ。

 今回はベテランのコージさんに案内してもらい、渓道楽の中村(ナカナカ)と、ネット仲間のモーちゃんの4名で晩秋の渓を釣る計画だ。宿に泊ってももちろん良いのだが、どうせなら渓泊まりでという私のワガママを聞いてもらい、車止めにてキャンプすることにした。

 出発は土曜の午前0時だが、運悪く木曜、金曜と出張が入ってしまい、高松、博多と南国の地にて仕事を片付けて、大急ぎで羽田へと舞い戻る。さすがに疲れが残っていて家で仮眠をとったにも関わらず、ナカナカの運転するインプレッサの助手席で爆睡。気がつくと待ち合わせ場所のS.Aに到着していた。

「今着きましたけど、どの辺にいますか。」
「トイレの近くでタコヤキ食べてま〜す。」

 コージさん、モーちゃんと、いつぞやの飲み会以来の再会を喜び、再び本線への合流路を加速した。

 今回行く渓はコージさんのお気に入りの渓のため名前は出せないのだが、天然のイワナの釣れる渓らしい。今年最後の釣りとなるので、どんな綺麗な魚体に出会えるのか楽しみである。

晩秋の渓

今年最後の渓流
どんな岩魚に出会えるのだろうか
入渓地点にて

 夜明け前に現地に到着し、仮眠を取る。ふっと目を閉じたと思ったら、すぐに誰かが起き出した気配を感じた。5分もたってないかと思ったら1時間以上も寝ていたらしい。やはり出張の疲れが残っているのだろうか。喉もすこしイガイガして風邪をひきそうなので、厚着して出発した。

 しばらく歩くと堰堤の脇に出た。「この堰堤でも大きいのが出るんですよ」とコージさん。水量は豊富で大きな岩が転がり渓相は素晴らしい。踏み跡で堰堤の上に出て、モーちゃんとナカナカが早速釣りの準備。
 渓は小滝、落ち込みを重ねて、いかにもイワナの出そうな感じである。私はしばらく様子を見ることにして、ゆっくりと後をついていった。

 いくつかの小滝を乗っこし、滝の下に竿を入れたモーちゃんに初イワナが来た。型は7寸ほどでヒレもピンとした美しいイワナである。そっとリリースして、また上を目指す。

コージさんの見つめる中、竿を出すモーちゃん 小滝の下、岩魚を狙う

 渓の両側は深く切り立っていて、まだまだ日が差さない。そんな中を遡行する4人。モーちゃんが2尾目をゲットし、ナカナカも1尾釣ったようである。

 じゃあ、そろそろ俺も釣ろうかなと仕掛けをセットする。落込みが連続しているのでポイントには事欠かない。そうこうしてるうちに支流の注ぐ出合いに着いた。

 左岸から出合ってくる沢も落差が大きく、いかにもな沢である。モーちゃんがいきなり岩魚を釣上げ、「これは、ウジャウジャかぁ」と期待を寄せる。
 コージさんとナカナカの2人は本流を釣上がり、私とモーちゃんが支流を釣ることにし、2時に車止めでと約束してわかれる。

支流の岩魚達
 支流に踏み込んだ2人はポイントに竿を出しながら、ゆっくりと進む。やはり岩魚達は支流に遡上しているようで、そこそこのテンポで釣れてくる。
 途中、左岸から沢が流れ込んでいて、滝が見えている。水量が少ないので釜はなさそうだが、2人で上がってみた。一応竿を出してみたが反応無し。三脚を立てて写真を撮り、再び本筋を遡行した。

静かに流れ落ちる滝
おかず用にキープさせてもらった

 とりたてて難所も無く大きな滝も無いこの渓は、ずっと上まで岩魚がいそうな感じであった。その後1尾ずつ晩のおかずをキープして上がっていくと、苔むした滑となり一気に高度が上がった。
 帰りの時間を考えるとそろそろ納竿だ。釣った魚をさばくと腹に卵をもっていた。
「もう、産卵の時期なんだねぇ」
シーズンの終わりを想い、ちょっと寂しくなる。

本流を釣るコージさん 小滝が連続する流れ
コージさんの釣った岩魚


 車止めに戻ったがコージさん達の姿は無い。
「迎えに行ってきますよ。」
モーちゃんが車を走らせ、2人を迎えに行った。ほどなくして戻った2人、
「まさか迎えに来てくれるとは思わなかったよ。来てくれればなぁって話してたんだけど、そこまで気が利かないでしょ、なんて言ってたんだよね。」
モーちゃん、ナイスな判断であった。

 車止めにテントを設営し、薪を集め、準備は万端。しかし、まだ時間が余っている。
「じゃあ、もう一回行っちゃいましょうか。」
と今度は車止めよりも下流部を釣ることにした。
 
 車止めの下は結構な水量で遡行もままならない。大きな淵を長い仕掛けを使って攻めるも、私にはアタリがあっただけ。モーちゃんは粘って綺麗なアマゴを釣上げた。
「アマゴ食べたいから、ちょっと小さめだけどキープしましょう。」
といって大事にキープするモーちゃん。

 だんだんと日も暮れ、秋の渓がよりいっそう寂しい佇まいを見せている。

 テン場ではナカナカがすでに焚き火を起こし、宴会の準備を進めている。速攻で着替えて仲間に加わり焚き火をバンバン燃やした。10月の渓での野営は結構寒いが、盛大な焚き火が心まで温めてくれる。

飯盒で炊く飯はことのほか美味い 焚き火の炎がゆらめき、夜が更けていく

 聞こえてくるのは岩を割って流れる渓の音。ときおり頭上の梢からドングリが落ちてくる「コーン」という音が響き渡っていた。

ヤブ沢

 明けて翌日、6時くらいに目が覚めるとナカナカが焚き火を起こしている。朝飯はキムチチャーハンととん汁。飯を炊いたのだが火加減に失敗し、下がこげているのに上は柔らかい状態・・・。チャーハンを作るも柔らかいご飯は炒めてもパラパラにならず。それに当たったのはモーちゃん。最後の私のところは絶妙の出来具合。
「僕が食べたのはなんだったんでしょうね。次ぎは最後に食べます。」

ボンヤリ過ごす朝のひととき 食事が待ち遠しいモーちゃん
キムチチャーハン 中村特製とん汁!


 午前中は支流を狙うことにして、ジャンケンで組み合わせを決めた。こんどはモーちゃん、ナナカナ組、コージさん、私組とわかれて入渓。
 入っていきなりコージさんが7寸岩魚ゲット。
「ここ、いますよ!」
「マジっすか。もしかしてウジャウジャ? でも、これっきりだったりして。」

 物凄いヤブ沢を50cmくらいに詰めたチョウチン釣りで釣りあがるが、最初の冗談どおり7寸1尾で終わってしまった。
 これじゃ、いくらなんでもってんで、今度は下流から入渓。渓までは結構な急斜面を木に掴まりながら降りていくと、5mほどの見事な滝に出会った。
「上なんかじゃなくって、こっちでしたねぇ。」
とニコニコしながら竿を出す。しかし、結局釣れたのは6寸くらいの岩魚が1尾。

モーちゃんと8寸イワナ

 もうすぐ車ってところでモーちゃんたちが帰ってきた。なにやらビニール袋をぶら下げているんでないの。
「7寸と8寸が出ましたぁ。」
う〜ん、こっちは外れだったか。やはりジャンケンに負けたのがいけなかった・・・。

 帰りは温泉に入って疲れを癒し、東名の大渋滞へと突入していったのである。
 気がつくと風邪がすっかり治っていた。






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