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 山形県 蔵王 馬見ヶ崎川支流
                八方沢

 2000.09.09〜10
 釣行メンバー:川上顧問、奥田秀朗、
          中村敏之、田辺哲









Text :田辺 哲
Photo:中村 敏之
 

1、源流マンは弱音を吐いてはならない!
1、源流マンは担げなければならない!
1、源流マンはどんな状況においても焚き火でメシを炊けなければならない!


 川上顧問の実にありがたい?お言葉でございます。
 つい最近まではそれこそ里川での大物釣りに没頭しておりましたが、わたくしのお粗末な釣技に騙される大物さんなど居るわけもなく、徐々に人様の立ち入らない源流域に川上顧問のあたたかい?ご指導のもと立ち入るようになったのでございます。いやいや、決して人間嫌いになったわけではございません。できることならたまには温泉宿泊りでの釣りを堪能し、夜は美人おかみのお酌で一杯!。あわよくば同宿の温泉ギャルなどをみごとに釣り上げ…。なんてことに憧れてもいるのでありますが、一度源流マンの扉を開けてしまった以上、そのような行動に出てしまった途端、決して広くはないこの源流業界では生きていけなくなってしまうのでございます。
 「でも、源流で大物バッコンバッコンでしょ!。うらやましいなあ。」なんてお言葉も聞こえてきそうでございますが、現実は厳しく「泳げない」「ヘツれない」「体力ない」と、ないないづくしのわたくしの 能力で、しかも週末のごく限られた休みの中ではオサカナさんのお顔を拝むことさえ困難なのでございます。
 そのようなミジメなわたくしの姿を見るに忍びなくなったかどうかは定かではございませんが、川上顧問より「八方沢釣行」のお誘いがあったのでございます。数年前の釣行時には淵に群れる大物さんを確認されており、今回は餌、テンカラでやっつけてやろう!という魂胆でございます。

 八方沢の注ぐ蔵王ダムにはあっけなく到着してしまいました。なんせ「山形蔵王IC」から至近の距離であり、途中もりっぱな舗装道路でございました。

 今回は当会発足前からの釣友であります中村氏、何を間違ったのか「入れ食い」を味わいたくて今期入会してしまった奥田氏の同行でございます。「入れ食い」を味わいたければ他に素晴らしい釣技をお持ちの会は幾らでもありますし、源流指向であればもっと遡行能力に優れた会がいくらでもあるというのに…。

 テン場到着もあっけないものでございました。このような近場で果たして魚信があるものか多少の不安がございましたが、カリカリに透明な清冽な流れ、ホレボレするような渓相を目前にして早速大物釣りの始まり始まりでごさいます。
 川上顧問は百戦錬磨の川虫。中村氏はドバミミズ。奥田氏はいつも使い慣れているブドウ虫で釣り上がります。わたくしはというと、つい最近あの瀬畑雄三翁の三百数十番目の弟子入りを果たした身であり、翁御自身よりいただいたラインと毛鉤りでのテンカラ釣りでございます。

瀬畑さんから貰ったテンカラで攻めるナベちゃん 瀬畑流テンカラ免許を取り消された川上さんは
今回は餌釣り
丹念にポイントを探って行くが…


 しばらくは小手試しということで、7、8寸でも出ればなどと思っておりましたが、全く魚信のないままF1に到着してしまいました。ここまではウェーダーでも楽に遡行でき、途中ペットルが捨ててあったこともあり、「まあ、こんなもんだろう。」と余裕でございました。

 この滝、右岸の崖に古ぼけた残置シュリンゲらしきものがぶら下がっておりましたが、不用意な高巻きは崩落の激しいこの渓では命取りにもなりかねず、誰が言うともなく「直登」とあいなったのでございます。
 川上顧問よりトップを言い渡される。といっても実際に言葉にされるわけではなく「アゴ」で 「行け!」と言われるのでございます。このような時に「わたしカナヅチだから…。」とか「とても無理です、ザイルで引き上げて下さい。」等とは言えないのでございます。

1、 「源流マンは弱音を吐いてはいけない!」のでございます。

F1、4mに取り付いたナベちゃん 「どうやって行けばいいんだよぉ」
強烈な流れにへっぴり腰になるナベちゃん
川上さんは高みの見物
心の中では「落ちろ、落ちろ・・・」(笑)


 取り付きは上手く滝の巻き込みの流れを利用したため容易であったのですが、ここから落ち口のトイ状をクリアするのに難儀いたしました。ヘツろうにも「ヘツれない」わたしのことを後ろで見学されている3名が「落ちる所を見せてくれ!」と言っているように見えるのでございます。実際にはそんなことはないのでしょうが…?。見るに見かねた中村氏が指示を伝えにやってまいりました。
 結局30分も「セミ」状態になっていたでしょうか、意を決して指示どおり対岸に両手をつき、両手両脚で両岸を突っ張りながら突破できたのでございます。
 トップが落ちないというのは後続の恐怖をあおらないためにも重要でございます。
幸い後続の3名はみごと?な遡行術で何なくクリアされたのでございます。

力強くF1を越えて来る奥田さん 華麗なる川上さんの遡行技術
F1の上を探る奥田さん 何時に無く真剣に釣る川上さんだが…
南雁戸沢 南雁戸沢より八方沢を望む

 さて、ここから大イワナ釣りの核深部とのこと。いつもは遊び半分の川上顧問もめずらしく真剣であります。そして、そして、今か今かと魚信を待ちわびて遡行しておりますと突然15MはあろうかというF2が姿を現したのでございます。

これが噂のF2、14m


 わたしどもの「八方沢大イワナ釣行」はまだ昼飯前だというのにあっけなく幕切れとなったのでございます。F2のクリアは顧問のようなエキスパートでも完全武装でないと厳しい、それはそれは恐ろしい滝でごさいました。「いつかこの滝上に移植放流しよう。」そう顧問が独り言をおっしゃいましたが、当会会員にお声が掛かる日が来るのでしょうか…。

1、 源流マンは担げなければならない!。

 今回のような昼前で釣り終わってしまい、なおかつオサカナの顔を拝めなかった場合、特に重要な意味を持つのでございます。そう、イワナは不在であっても酒、食料を大量に担げれば「宴会は逃げない。」のでございます。そして「担げる男」であれば「泳げない」「へつれない」「体力ない」わたくしのようなドシロウトでも渓の達人と同行させて頂ける機会も訪れるようでございます。

川上健次、お昼寝中
(因みにまわりに転がっている
ペットボトルの中身は酒)
そこにはまるで水など無いのではと思えるほど
八方沢の水は透明度がとても高い


1、 「源流マンはどんな状況においても焚き火でメシを炊けなければならない!」

 今釣行も釣りきられてしまったイワナの怨念か、はたまた日頃の行ないのせいか、そぼ降る雨中の宴会でございました。このようなちょっぴり寂しい夜だからこそ盛大な焚き火が重要な意味を持つのでございます。そう、ガス炊きのメシでは寂しさが増幅されてしまう…。

魚は釣れなくても宴会は楽しい 焚き火が無ければ夜が寂しいよ
森の中のテン場


 源流での大イワナ釣り…。いつになったら体験できるのでありましょうか。発足当時からの会員の中村氏はすでに悟りの境地に入っているのか、それともあきらめの境地なのだろうか、いたって陽気なモンであります。
 新入会員の奥田氏、これが当会の現状でございますが、決してあきらめる事のないようにお願いする次第でございます。そう、顧問の3つのお言葉を実行していればね…。

テン場付近の流れ
この清冽な流れに
イワナが帰ってくることはあるのだろうか
霧に煙る八方沢
帰りの林道にて
現実の世界へ・・・



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