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 岩手ハヤ釣り釣行記

  岩手県 和賀川


   2000.06.30〜07.01

   岩田、中村


Text&Photo :中村 敏之 

『ツンツ〜ン』
『ピシッ!』
『ピチピチピチ』
「またハヤか…。」
「おかしい、こんな筈では…。聞いた話では尺岩魚がバカスカ釣れると言う事なのに…。」
先程から釣れてくるのはハヤばかり、会長の方もハヤの猛攻に悩まされている。
「会長、ハヤしか釣れませんよぉ。」
「う〜ん、やっぱり時期が遅かったのかも知れんなあ。今年は1ヶ月ばかり季節が遅いから、今が丁度良いかと思ったんだけど、もう水が温くなっているもんなぁ…。」
「えっ、やはり遅かったんですか?それじゃ尺岩魚入れ食いって話は?」
「フ〜ン難しいなあ。岩魚はもう上の方に登っちゃったんじゃないかなあ?」
「そ、そんな、わざわざ休みを取って、はるばる岩手まで来たのに…。」
お先真っ暗、どうやら今回も良い釣りは望めないようだ。

ハヤを釣りまくる会長

釣っても釣ってもハヤしか釣れずいい加減うんざりした頃、遂に会長が小型の岩魚を掛ける。喜んだ会長が
「中村さ〜ん、イ・ワ・ナが釣れました〜。岩魚君いますよお〜。」
とおどけているので、私も
「そーですかあ〜、そんじゃーがんばりまあ〜す。」
と調子を合わせる。

岩魚が居る事が分かったので、気合いを入れて釣るがやっぱりハヤしか釣れない。落ち込みの袖や白泡の中、淵尻のかけ上がり、瀬の中の沈み石など考えられるポイントを手当たり次第に探るが、岩魚は顔を見せてくれない。会長の方はハヤ3に対し、岩魚1という感じで釣れているが良型は出ない。
本流が駄目な時は沢でしょ。と言う事で、途中の沢に入ってみるが、こちらもさっぱり釣れない。
「おっかしいなあ。前にここをやった時はいいのがいくつか釣れたんだが…。」
としきりに首を捻る会長。しかし、まるでアタリが無いので沢を釣るのを諦めて引き返す。

再び本流に戻り暫く釣っていると、いつもの如く竿が固着した(私の愛竿は年中固着するのです)。ハヤしか釣れない怒りもあって、自分の意志以上に力が入っていたのか、ぐっと捻ると「パァン」と乾いた音を残して竿が砕け散ってしまった。まさに弱り目にたたり目、一気に釣欲が萎えてしまう。
「会長、竿が割れちゃいましたよ。」
「え〜?ああこりゃ酷いねぇ。」
「ど〜せハヤしか釣れないし、釣りはもういいです。会長が釣るのを見学してますから、存分に釣って下さい。」
「竿が折れるとがっくりするもんなあ。そんじゃま休んでなよ。」
と慰め顔をしながらも、いそいそと先行する会長。

会長が釣る後ろをトボトボと付いて行くと、突然会長の竿が満月にしなった。遂に大物が掛かったらしい。抜き上げてみると尺には足らないものの九寸超の立派な岩魚だ。
「いや〜、ようやく釣れたよ。ウハハ。」
苦労しただけに嬉しいのだろう、満面の笑みを浮かべて喜ぶ会長。メジャーだ写真だとはしゃいでいる。

やっと釣れた九寸岩魚

良型が釣れたので余裕が出たのか会長は
「予備の竿あるんだろ?それでやりなよ。」
などとしきりに勧める。
「そうですね、1匹ぐらい釣らないとね。」
と短竿を取り出し、餌も必殺のドバミミズに換えて釣り始めるが、釣れるのはやっぱりハヤ。
「チクショ〜、ドバは数が少ないってのに、ハヤなんぞが食いやがって!」
と怒ってみたところで仕方が無いが、いい加減頭に来る。

釣り上げたハヤを流れに放り投げつつ、ふと前方を見ると湧き水が滝となって流れに落ち込み、大きな淵になっている第一級のポイントを発見した。
「会長、あそこはいかにも大物が居そうですね。」
「そうだな。きっといいのが居るぞ。」
会長の励ましを得て手前から慎重に探り始める。しかし手前の方にアタリは無い。そしていよいよ一等地に餌を投入する。流れの筋に乗った仕掛けがぶっつけのあたりでフッと止まり『ゴッゴッ』とにぶいアタリが来た。「きたあ!これは岩魚のアタリだぜぇ。しかも大きいよ〜ん。」とワクワクしながら岩魚にドバを食わせに食わせる。ついでに玉網を用意しながら、岩魚が針の所まで食うのを待つ。
待つ事暫し、遂に岩魚が針の所まで食った様子。「今だ!」とすかさず合わせをくれる。と何たる事か『プツン』と糸が切れてしまった。見ると重りを付けていた上の部分で切れてカールしている。おそらく根掛かりを強引に外した時に重りで擦られ伸びていたのだろう。「くぅ〜何でチェックしなかったんだぁ!俺のバカバカ!」と悔やんでみても、もはや後の祭りである。「ひょっとして、また食ってくるかも?」と淡い期待を抱いてもう一度流してみるが、その岩魚が餌を食う事は二度と無かった…。

渓に咲いていた美しい花

結局、私はその後も岩魚は釣れずに退渓予定地点に到達してしまい、見事にボウズと相成ってしまいました。埼玉から、わざわざ岩手県まで行ってハヤしか釣れないとは、我ながら開いた口がふさがりませんねえ、ハハハ。あ〜それにしても、逃がした魚は大きかったな〜。

   

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