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福島県 只見川水系

 2000.06.10〜11

 バイオマンさん、ぼさマンさん、モーニング狼さん、
 ちばさん、HARAさん、malmaさん、uppuさん、高野









Text&Photo :高野 智 

 餌を探して釣具屋をはしごして家に帰り、風呂に入っていたら「電話だよ〜、○○さんから・・・」と女房が言う。
「やば、早く出なくちゃ」と急いで電話に出ると、「こんばんは、uppuです。今、駅に着きました」と長野から遠征のuppuさんが到着。
「直ぐに行きますから」と慌てて服を着て外に出た。すると駐車場に1台の車が止まった。
「もしかして・・・」と思ったが、とりあえずuppuさんを迎えに急ぎ足。
 uppuさんは今回の釣行に参加するために、東京出張を強引に入れるという掟破りの技を使い、その足で大宮まで来ていただいた。仕事だからスーツだろうと思っていたのだが、ポロシャツというラフな格好。
 宜しくお願いしますと握手を交わし、「今、車が来たんですけど、もしかしたら千葉さんかも・・・」
と行ってみるとやっぱりそうだった。
今回最長老の千葉さん、最長老だけあって○●肩で腕が上がらないらしい。ヘツリや巻きは大丈夫だろうか? まあ、落ちたら埋めてくるしかないなと思いながら、車を入替えて荷物を積み込んだ。

 ちなみに「埋める」は今回のキーワード。何かやらかした者があそこに埋められることに決まっている。まあ、候補は最初から数人に絞られている模様・・・。

 他のメンバーとは0時に佐野SAで待ち合わせなので、それまでまだ4時間もある。近所のファミレスで晩飯を食べ時間つぶしをして11時頃に大宮を出発した。

 佐野SAに全員が到着し3台の車に分乗して出発! いよいよ「あそこ」ツアーの始まりである。
モー狼さんのテラノを先頭に、3台は只見川水系の「あそこ」を目指して深夜の道を爆走した。
 それにしてもモー狼さんの運転するテラノの速いこと! あの重たい車をあそこまで振り回すとは、こやつ只者ではないな。
 調子に乗って走っていたら、ぼさマンさんのエスティマが徐々に離れだした。「ぼさマンさんは道知ってるから大丈夫だろう。」と勝手に決めて、深夜のワインディングロードを楽しんだ。

 伊南川沿いの道を走っているときに空が明るくなってきた。幸い雨も止んで天気も持ちそうである。

 すっかり明るくなった頃、目的地に到着した我々は沢割りをして2組に分かれ釣る事になった。
 A沢に入る組はモー狼さんをガイド役に、千葉さん、HARAさん、MALMAさんの4人。隊長?の千葉さんは源流経験無し。源流っぽいところは行ったことがあるそうだが・・・。他の3名は大丈夫だろうが、果たして千葉さんは?。
 B沢の4名はバイオマンさん、ぼさマンさん、uppuさん、私。山菜に詳しいメンバーは全員こちらになってしまい、必然的に山菜ツアーになる運命。

 そこでバイオマンさんが、「皆さん、鮎タイツとかウェーダーですか?」
あれ、皆ほんとにそうなの? 私はジャージしかない・・・。「私ジャージですけど」と言うと、「あれほど雪渓がありますよって言ったのに、ほんとにジャージしか持ってこないんだもんなぁ」(笑)
とバイオマンさん。
「じゃあ、ジャージの上にカッパ着ますよ」とは言ったもののちょっと心配になってきた。

 話によるとA沢のほうが奥が深く、雪渓の心配があるという。B沢も危ないが、なんとか釣れるだろうと期待と不安を胸に只見の渓に足を踏み入れた。

 ゼンマイ道を辿り、V字に切れ込んだ渓に下降し歩くこと1時間。渓相が良くなってきた辺りから「もう辛抱たまらん」と4人は竿を出す。
 まず最初に竿をだしたのは私。ドバを使うには水量が足りない。ブドウ虫に変えて流すと”ククッ”というアタリが・・・。
「どうも小さそうですねぇ」ともう一度流す。今度はちゃんとアワセた。岩魚の渓かと思っていたのだが、きたのは6寸くらいのヤマメだった。放流してないから天然物か? この渓第一号の美しい姿を目に焼き付けリリースする。

 1尾釣れたので先頭交代。uppuさんを先頭に釣りあがって行く。渓はV字に切れ込み手付かずの原生林が我々を迎えてくれる。両岸には山菜が豊富に顔を出し、ブナを始めとする木々は緑に萌えて目に眩しい。

岩陰から落ち込みを狙うuppuさん

バイオマンさんには26.5cmが

渓は徐々に高度を上げ、落ち込みが増えてくる。やがて狭い渓の先に直爆2m、5mの2段の滝F1が現れた。右岸は手がかりも少ないので左岸を直登する。取り付き地点は楽勝だが、途中の部分が滑りそうな岩の色をしている。
 今回は水量が少ないので問題ないが、多いときはシャワークライムが楽しめるらしい。しかし、水に手を浸けていると痛くなるような今の時期はご免である。

 渓の美しさと山菜に目を奪われているとuppuさんが1尾上げたらしい。サイズは7寸。おお!待望のキープサイズ!

 とりあえずゲスト2人が魚の顔を見れたので、ガイド役のバイオマンさんが前に出る。この渓をホームとしているだけあって、無駄のない釣りをしている。そんなことを考えながら後をついて行くと、良型の岩魚が流れを割って飛び出してきた。
 文句なしのキープサイズ、26.5cm! これを見た我々は色めきたった。「この先、こんなのが入れ食いかぁ。」

 雪渓を越えたところの瀬の深みに竿を出したぼさマンさんにも待望のキープサイズが来た。「こんなとこにもいるのかぁ。初めて一緒に行く人の釣りを見ていると勉強になるなぁ。」
 これでキープサイズが出ていないのは私だけ。「なんだぁ、俺だけか・・・」と言った独り言をしっかりとぼさマンさんに聞かれていたようだ。
 皆にキープサイズが来たので、遠慮なく先に行かせてもらうことにして、先頭に立ってビシバシと竿を出していく。何せキープゼロでは渓道楽は実は釣りが下手ってのがバレてしまう。せめて1尾はと思っていたら竿に伝わる心地よいアタリが・・・。ようやく23cmの綺麗な岩魚が出てくれた。これでホッと一安心。
私に来た救世主 美しい23cmの岩魚

 F2を超えるとだんだん雪渓の規模が大きくなってきた。やはり今年の雪の多さは半端じゃなかったらしい。酷いところでは完全に渓が埋まっている。それにしても雪渓が残っているわりには水量が少ない。雪代も全然入っていないようだし・・・。

 それでも魚影は確実に濃くなっている。我々が水際をバシャバシャ歩いていると、小さな岩魚どんどん走る。

 その後、ポツポツと飽きない程度に皆の竿がしなるのだが、釣れるのは20.5cm止まりの岩魚たち。しかし、アタリが増えてきたのは間違いないこと。この先期待できるぞと言っていたら、完全に渓が雪渓で埋まってしまっている。
 先を偵察するも残念ながら無理の様子・・・。ついに諦めざるを得なくなってしまった。

 時計を見るとまだ10時。今から戻ると昼には車に着いてしまう。集合時間は4時なのだ。どう考えても早すぎるので、ここで焚き火して大休止することにした。

 そうと決まれば薪集め。流木は少なかったが、なんとか焚き火ができるくらいには集まった。 が、薪はどれも湿っている。おまけに悪いことに雨まで降り出してきた。HPで「焚き火のやり方」まで公開している手前、「点きませんねぇ」ではカッコが付かない。実はこの時はかなり緊張していたのだ。それでもなんとか一発で火が点いてホッと一安心。

「そうだ、ついでに魚も焼いちゃいましょうか。」と枝を削って作った串に岩魚を刺して焚き火の周りに並べる。ここでお待ちかねのuppuさん特製、自家製味噌のお出ましだ。岩魚の腹にたっぷりと味噌を詰め、周りにも付けて焚き火の周りに刺す。
 uppuさんの自家製味噌は、それだけ舐めるとちょっとしょっぱい気がするのだが、付けて食べるとめちゃめちゃ美味である。味噌だけ舐めてちょうど良い味だったらダメなんだろうなぁ。まさに絶妙の味としか言いようが無い!。

焚き火で岩魚を焼く
まさに山釣り最高の楽しみ

 河原に腰掛け、焚き火の炎が大きくなっていくのを眺めながら釣りの話に花が咲く。ここの渓は盛期はどうだとか、あそこの渓はどうとか・・・。
 でも、やっぱり気になるのはA沢班のこと。「こっちの渓がこんなに雪渓が残っているんだから、むこうはもっと凄いんじゃない?」
「そうだよねぇ。絶対向こうのほうが凄いよ。下手したら入って直ぐに埋もれていて、釣りにならないんじゃない?」
などと、どうしてもA沢班のほうが釣れていないということにしたいB沢班の4人。
「もしかしたら、隊長がもう帰るって言って駄々こねてるかもよ。」
などと特定の人を名指しで諦めさせたいような話までも出ている。
「まさか尺なんて出てないよねぇ。うん、絶対出るわけないよ。」
「そうだよね、もし、出てたら埋めちゃおうよ。」という秘密の計画までが出来上がっていた。

 おそらくA沢班もこちらの様子が気になっていることだろう。向こうでも同じようなことを言っているに違いないのだ。

 さて、そんな話をしていたら岩魚が焼けたようである。味噌を付けた岩魚はこんがりと良い具合の焦げ目が付いて、とっても美味しそう。
「いただきま〜す」と焼きたての岩魚にホフホフとむしゃぶりついた。
「うめぇ〜! 最高の味噌焼きだぁ。」
ついでにウルイにも味噌を付けて生でかじる。
「これも、うめぇ〜!」
さらにさらにコゴミを茹でて味噌で食べる。
「もう、最高!!」

「A沢班は山菜知っている人いないから、こんなこと出来ないよ。」
「ほんとだよね、焚き火して岩魚焼くなんてしないだろうしねぇ。」
「こっちの班で良かったよ。ガハハハッ〜。」
てな感じで、あまり釣れなかったのをお互い慰めあう寂しげな4人。

 気が付くと雨は上がり、薄日まで差し始めた。まさに最高の山釣りである。

 もっと焚き火を囲んで楽しい時間を過ごしたいのはヤマヤマだけれど、我々には重大な使命が待っている。そう、今回の目的?山菜採りである。時間も12時近くなったことだし、重い腰を上げ下降を開始した。

 さあ、ここからはもう一つのお楽しみ、山菜採りだ。歩きながらも両岸に狼(ハイエナか?)のような鋭い視線を走らせ次々と山菜をコンビニ袋に詰め込む。
 中には大岩に攀じ登り命がけでウドを採る者もいる。「ウド採ってて落っこちたら洒落にならないよぉ」という声に耳も貸さずに必死になるバイオマンさん。
 ちょっと平地があれば道から外れてコゴミを採り、斜面にウルイがあれば攀じ登る。皆、なんだか岩魚釣りよりも楽しそうである。

 そうやって渓を降りてきた我々はF1の滝まで辿り着いた。上りは多少の苦労で越えてきたF1だが、下りは慎重に行かなくては落ちるかもしれない。
 ぼさマンさんの持ってきたロープを立ち木に結び、それを頼りにまずはバイオマンさんが下る。足場を慎重に選びながら、上段の釜まで無事に降り立った。私、uppuさん、ぼさマンさんと続けて下降し、再び山菜モード。

F1を下降するuppuさん 簡単そうに見えても慎重に行動しなければならない
油断は禁物である


 2時間ほど時間を掛けながら入渓点に戻った我々を待っていたのは、ワラビの草原!! ワラビ教の教祖uppuさんは一抱えくらい採ったのでは?

退渓点に咲いていた藤の花


 大量の山菜に大満足の我々B沢班。車で集合場所に着くがA沢班の姿は無い。まだ2時なので居なくてもおかしくはないのだが、渓の状態があんなふうだから、てっきりもう戻っていると思っていたのだが・・・。

「こりゃ、もしかして釣れているのかなぁ。」
「そうかなぁ、尺出てたらどうしよう。」
とまたまたA沢班が気になりだした。
「まさか隊長落っこちてないよねぇ。」などと多少は心配もする。

まあ、そのうち戻ってくるだろうと私は夢の中に引き込まれていった。

 1時間も経っただろうか。なにやらガヤガヤと話し声が遠い所から聞こえてくるような気が・・・。どうやらA沢班が帰ってきたようである。
 眠い目をこすりながら車から出て、早速釣果を聞くと、「うん、尺は出なかったけど、9寸強を頭に全部で8尾くらいキープしたよ。」
「なにぃ、9寸強!だってぇ。」
聞けば1時間半ほどゼンマイ道を歩いて渓に降り、そこから結構釣れたらしい。
 渓は雪渓に埋もれていたようだが、B沢に比べると水量もあり、雪渓も少なかったようである。

隊長がゼンマイ道から落ちそうになった他は、特に怪我も無く無事に戻ってきた模様。う〜ん、話のネタになるようなことが無いなぁ。(笑)

 今回の最大サイズは9寸強を釣ったHARAさん。HARAさんは今年40cmという大岩魚を上げている。ここでも大物賞を取ったとなると、埋められる人は絞られてきたようだ。最終的には隊長が決めるらしいが、隊長の意見もH氏に傾いてきたのでは・・・。

 さて、一日楽しんだあとは宿に行って温泉である。今日の御宿は鶴亀荘。なにやらおめでたい名前ではないか。3台の車は宿を目指して山道をひた走ったのである。


 朝、目が覚めたのは7時頃だろうか、夜中はかなりの雨音だったような気がするが、今は小降りになっている。朝飯を食べてから釣りに行く予定なのだが、天気もイマイチだし昨日の雨量では濁りも入っているかもしれない。食事と着替えを手早く済ませ、今日はモー狼さんと本流で大物を狙うことにした。

 入渓場所に着いた我々は、踏跡を辿って本流沿いの岩の上に立った。目の前には真茶色に濁った流れが渦を巻いていた。これでは渡渉はおろか渓通しでの遡行も無理だろう。まあ、時間も2〜3時間しかないので、この辺りの大場所で粘ればいいだろうと、早速竿に仕掛けを繋ぎ餌を付ける。今日の仕掛けは6.6m渓流竿に2号通し仕掛け、6Bのガン玉、ハリはチヌバリである。餌はもちろんドバちゃん!。

 まずは「ここに居なけりゃどこに居る」ってくらいの一級ポイント。両岸の大岩によって絞られた流れがゆっくりと広がっていく大淵。まずはセオリー通りに流心の脇に餌を放り込み、底をとって低層を流す。
 深さは2m以上あるだろうか。流れに乗った目印がゆっくりと下流に進んでいく。流心がバラけて広がり出した辺りで目印がスッーと動いた。
「おっ、早速お出ましかぁ」とアワセをくれて底から引っ張り出す。ちょっと上手に立っていたモー狼さんが水面から顔を出した岩魚を見て、
「おぉっ、デカイじゃないですかぁ〜っ!」と叫んでいる。
なんだか掛けた本人よりも興奮してるみたい。
「よしよし、こりゃ小さくても9寸、いや尺くらいかな」とタモを取り出そうとした瞬間!
「あっ!」バラしてしまった・・・。
おそらくちゃんとハリ掛かりしていなかったのだろう。茶色く濁った流れに帰っていってしまった。得意のドバを使っていたのになんたることか。もっと待つべきだったのだ。

 もしかしたら、もう一度食ってくるかもしれないと、何度も流したが再び現れることはなかった。

 その後、上下50mくらいの区間を何度も釣ったのだけれど、残念ながらアタリがあったのはそれだけだった。たった一度のチャンスをものに出来なかったとは残念である。

 宿に戻るとバイオマンさんグループはもう戻っていた。
「どうでした?」
「大漁ですよ、山菜が!」とバイオマンさん。
どれどれと見せてもらうとミツバとシドケのいいのがあるでないの!
「こっちはバラシが1つです。隊長たちはまだみたいっすね。」

素晴らしい山の幸に感謝!
シドケ、ワラビ、コゴミ、ミツバ、フキ等々

 しばらくすると隊長たちも帰ってきた。こちらは7寸程のが4尾ほど出たらしい。

 最後に宿の前で記念写真を撮り車に乗り込んだ。

最高の仲間たち
後列左より ぼさマンさん、モー狼さん、HARAさん、malmaさん、uppuさん
前列左より 私(高野)、ちばさん、バイオマンさん


 とうとう「あそこ」ツアーも終わってしまった。帰ってから仕事だというモー狼さんもいるので、我々は後ろ髪を引かれながらも只見を後にしたのだった。

 最後に幹事、ならびにガイド役をやっていただいた、バイオマンさん、ぼさマンさん、モー狼さん、いろいろとお世話になりました。この場を借りてお礼を申し上げます。


※ 今回の釣行記は複数のメンバーがHPにアップしています。こちらからお楽しみください。

ちばさん「渓流一年生の釣り日記」
uppuさん「おがわくんのおうち」
   

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