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 山形県越後荒川支流

  2000.03.04〜05
 瀬谷進一、田辺哲、高野智











Text&Photo :高野 智 

解禁から3バカ集合

 栗子トンネルを抜けると積雪がグンと増えた。予想はしていたのだが、本当に渓に入れるのだろうか。そして、この時期天然物は動いているのだろうか。全てが不安であったが、解禁と聞いてはじっとしていられない。 今回のメンバーは当然、渓道楽3バカトリオ!
 釣りバカの集まりである渓道楽ではあるが、こんな時期に山形の雪に閉ざされた渓に入ろうなんていう、とびきりのバカはこの3人だけである。まずはサラリーマン週末釣り師でありながら、先シーズン50日以上竿を出した瀬谷進一、家庭を顧みず毎週源流に入り浸るナベちゃんこと田辺哲、そして、カミさんに黙って釣りに行っている間に子供が生まれてしまい、頭が上がらなくなった私、高野智の3人である。

3バカ、雪原を行く


 まず最初の心配事は林道がどこまで除雪されているかだった。今走っている国道113号線の両脇ですら雪の壁である。脇道の林道など雪に埋もれているのではないだろうか。心配しながら林道入り口まで行くと、なんとか除雪はされているようで一安心。 林道に乗り入れひたすら奥を目指す。やがて除雪された区間は終わりとなり、そこから先は真っ白なバージンスノーの世界になっていた。


朝日の登りはじめた雪道を行く 
すぐ先からはバージンスノーの世界だ

 もうここからは歩いていくしかない。目指す堰堤はしばらく先である。この時期は渓沿いを釣り上がるのは難しい。雪は全てを覆い隠し歩きやすいのだが、逆に言えば危険も覆い隠している。雪庇を踏み抜いて川に落ちれば冷たいじゃすまないし、雪崩の危険も待っている。我々は場所を絞り、堰堤狙いに徹することにした。
 幸い今日は雪も締まっていて歩きやすい。気温は−5℃くらいだが、風もないので寒さは感じない。積雪は2mくらいだろうか。雪の斜面を膝まで潜りながら渓に降りた。

 渓に降りたら早速釣りを開始。ブドウ虫をエサに仕掛けを振り込む。しかし、何の反応も無い。3人は何度も何度も仕掛けを振り込んだが、むなしく流れるばかりである。そのうち寒さで仕掛けが凍りつき、数珠どころか棒になってしまった。
 我々は朝日に輝く渓をあきらめ、次なる渓に移動することにした。


雪の中で竿を出す

渓は雪に埋もれ、イワナはじっと春を待つ

0.6号です 嘘じゃありません


せっかく降りた斜面を攀じ登る
重量級の2人には大仕事らしい

山はまだモノトーンの世界
だが、木々の芽吹きは近い

強い味方カンジキ あると無いとじゃ大違い

3バカ、場所替えをする


ほとんど滑り落ちるように渓へ下る

 今度の沢はもっと小さく、両岸はかなり急斜面になっている。夏に来たときは堰堤までは楽に行けたのだが、今の状況では道路から入るのも一苦労だった。まずは3mの壁になっている道路脇の壁を登り雪原に出る。そこからカンジキを履いて渓を目指すのだが、私以外の2人は体重80kg超のヘビー級。私のような軽量とは違い、一歩足を踏み出すごとにズボズボ潜って大変そうである。夏の渡渉の時は体重がもっとあればと思っていたが、こうなってしまうと軽くて良かったと思う。「なんで潜らないんだよぉ」と訴えられても、「右足が着いたか着かないかって時に、左足を出すんだよぉ」としか言えないんだなぁ。

 しばらく行くと渓への下降点が見えてきた。3人とも滑り降りるようにして渓の流れに立つと、冷たいながらも何処となく春の流れの雰囲気がある。

 早速川虫を取りながら堰堤を目指す。水量は結構少なく、堰堤下のプールも浅くなっていた。3人ならんで竿を出すと、瀬谷氏の竿が曲がった。錆びの残る天然イワナが踊る。次はナベちゃんの番。これも真っ黒なイワナである。


春をじっと待つイワナ まだ黒く錆びている
なぜこんな過酷な環境に暮らしているのか?

 アタリは小さく引きも弱い。まだまだ体力は回復していないので、じっとエサを待っているのだろう。
 その後しばらく粘るも私の竿にはアタリが来ない。ここはあきらめ第2堰堤へと右岸を巻く。
雪の上から渓を覗くがイワナは見えない。木々もまだまだ冬ごもりの最中であった。しかし、降り注ぐ太陽は明らかに春の訪れが近いことを告げている。そういえば明日は「啓蟄」。じっとしていた虫達が動き出す季節はすぐそこまで来ている。
 3m近い雪の上から振り込んだ私の仕掛けに、かすかなアタリがあった。軽くアワセると真っ黒なガングロコギャルのようなイワナが上がってきた。街にいるガングロは好きではないが、イワナとなると別である。早く大人になれよと流れにかえす。

 木に掴まりながら渓に降りて、ゆっくりと堰堤までを遡行する。川虫は取れるが、イワナは釣れない。
 第2堰堤に竿を出すとナベちゃんに8寸イワナ、瀬谷氏に7寸イワナが出る。しかし、ここでも私には釣れなかった。

3バカ、酒池肉林?

 雪原を滑るように(私だけね)して車にもどり、越後屋で昼飯とした。ここでのお勧めメニューは「熊の手そば」。皆さんいくらだと思います。一杯なんと10万円! 懐の暖かい方はぜひお試しを・・・。私たちはもちろん普通のメニューの蕎麦を注文。歯ごたえのある蕎麦は最高に美味い。

 午後は別の沢の堰堤を狙うも不発に終わり、雨も降ってきたことだし温泉へGO! 晩飯は喜久一にて生ビール、米沢牛焼肉、餃子、とんかつ定食と豪勢な食事。宿は電気毛布完備の高級旅館?で熟睡となった。

3バカ、リベンジ

 昨日の天気予報では山形県置賜地方は雨だったのだが、起きてみるとピーカンの青空。輝く朝の陽射しを受けながら、早速仕度を済ませて出発する。
 今日はA川にでも行くかと車を走らせるが、あいにく昨日の雨で雪代が入って泥にごり。しかたなく昨日探ったB沢に入渓する。
 昨日と違い雪が緩んで歩きづらい。なんとか渓に降りて第1堰堤に竿を出す。 しばらくしても誰の竿も曲がらない。昨日より雪代で増水し、水温が下がってしまったのだろう。イワナはますますじっとしているようだ。


腹の黄色が鮮やかだ

錆びてはいるが美しいイワナ
陽光を受けて虹色に輝く

 仕掛けがベタ底になるように6Bのガン玉2個付けにして、仕掛けを投入。たまにそぉっと上げてみて聞いてみる。するとなにやら根がかりとは違う感触が・・・。念のためもう一度送り込み聞いてみると、確かに何かがかかっている。軽くアワセをくれて抜き上げると7寸の真っ黒なイワナが付いてきた。まだ痩せていてスリムだが、腹は黄色くヒレピンの天然物である。写真を撮ってそっとリリース。夏までにはグラマーになってまた遊んでくれよ。

 さすがに真っ黒な痩せたイワナをキープするのはかわいそうと 今回の魚は全てリリース。新緑のまぶしい季節になったら再び訪れるとしよう。


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