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 岩手県 閉伊川水系

  1998.09.26(土)・27(日)
   岩田会長、渡辺、高野、瀬谷、田辺、高野智


Text&Photo  :高野 智 

 いよいよ今シーズンも禁漁が間近となった。漁協によっては既に禁漁になった所もあり、渓魚たちも産卵の準備に入って餌を追わなくなってきた。今年は夏らしい夏がなく雨の多かった年であったが、おかげで渇水にならずにすんだ。しかし、集中豪雨によって各地に被害があり、清らかな渓流も濁流となり荒れ狂った。今回の渓道楽の98年最終釣行も、そんな天気のせいで富山県から急遽岩手県に場所を変更して行われた。

 今回向かうのは岩手県の閉伊川水系である。閉伊川は区界峠に源を発し、太平洋にそそぐ河川である。渓相としては落差の少ない、どちらかというと里川の雰囲気をもった川だ。しかし、支流はたくさんあり、なかには落差のあるところもあるので、渓道楽としてはそういった支流を攻めるつもりであった。


 26日(土) 天候:曇り時々晴れ

  「かじか」にメンバーがそろったところで21時半に出発して、東北道をひたすら走る。目的地に着いたのは5時頃であった。今回は人数が多いので3班に別れて釣ることにして、まずは、会長と渡辺氏が閉伊川の支流に入渓し、残った我々は刈屋川の支流の倉の沢と北山沢に入渓した。
北山沢 ヤマメ
北山沢の流れ
綺麗な7寸ヤマメ

 私と組んだのは8月に入会した瀬谷氏である。渓流釣りは今年から始めたそうだが、ガッシリした体格で源流部では頼りになるともっぱらの噂。この北山沢は思ったより落差がなく瀬谷氏のお世話になることはなさそうだ。橋の近くに車を止めて渓に降り立つ。両岸の草はなぎ倒され集中豪雨で濁流となったことが判る。心配なのは水害で魚たちが流されてしまったのではないかということだ。
 仕掛けをセットして第一投を流れに振り込んだ。しかし、アタリはない。しばらく釣り上がるがやはり芳しくない。そのうちポツポツとアタリが出だした。だがどう見ても小物のアタリ。アワセをくれると15cm程の岩魚が釣れた。これじゃキープは出来ないのでリリースする。比較的大きめの落ち込みが現れたので手前から順に攻めてみた。小さなアタリが出たのでアワセると7寸強の綺麗なオスの山女魚だった。やっとキープサイズが出てホッとする。しかし、あとが続かない。結局北山沢はそれだけだった。釣れることは釣れるのだが、なにせ小さすぎる。せめて7寸はないとキープする気にはなれない。残念だが瀬谷氏はキープサイズはゼロだった。

 車に戻り田辺氏と高野氏を拾いに倉の沢に向かう。入渓点に着くと田辺氏がしつこく竿を出していた。それを見てこちらも駄目だったのが判る。だが高野氏は、しゃがみこんでなにやらやっている。近寄ると8寸ほどの山女魚をさばいている。かたわらには7寸程の岩魚も転がっているではないか。「釣れたんですか」と聞くと「もっと大きいのをばらしちゃって」と言うではないか。こちらはいきなり7寸岩魚が出て、こりゃ入れ食いかと思ったのだが、しばらくアタリがなくキープ出来たのは2尾だけだったらしい。田辺氏は7寸岩魚が出たらしいのだが、リリース。本人いわく「毎週行ってるから、キープは8寸以上ですね」と余裕である。高野氏は9寸程のをかけたのだが、アワセが弱くてタモですくう寸前でバラシたらしい。それにしても岩手まで遙々きて、こんなもんだとは思ってもみなかった。あとは会長と渡辺氏がどうだったかだが、あまり期待は出来そうもない。

 集合場所に着いたが会長の姿はない。これは釣れすぎて納竿したくないのかなとも思ったが、そんなことはないだろう。やがて会長の車が到着。釣果は会長4尾、渡辺氏2尾で全て7寸程とのこと。やはり、水量が多すぎて厳しかったらしい。地元の釣り人に聞いたところ、最近の雨でかなり水量が増えていて釣れないと言っていた。支流も倍位の水量なのだろう、魚がついていそうな所ではアタリがなく、かなりゆるい流れでしか出て来ない。

 もちろん午後も釣る予定だが、こんな状況ではどこに入ったら良いのだろうか。渇水よりは良いが多すぎるのも困りものである。地図を見ながら検討した結果、私と田辺氏は矢田川に、渡辺氏と瀬谷氏は夏屋川に、そして会長と高野氏は達曽部沢に入ることになった。

 昼飯を食べてから夕食の買い出しをしようと、近所のスーパー(というより「よろず屋」)に行く途中に私たちの乗った1BOXのリヤゲートが開いているのを知らずに走ってしまい、荷物を道路にぶちまけてしまった。幸い後続車がいなかったので無事だったが、へたをすると竿がつぶされるところだった。あわてて拾っていると遊んでいた小学生達が手伝ってくれた。やっぱり田舎の子供たちはスレてなくて良いな〜。

 夕食の買い出しを済ませた私たちは2台の車で目的地に向かった。まず私たちの入る矢田川沿いの林道に入るが、よさそうな入渓点がなく行ったり来たりして時間はどんどん過ぎていく。これでは夏屋川組が釣る時間が無くなってしまうので、適当なところで降ろしてもらった。
イワナ 田辺氏
矢田川の岩魚 矢田川を釣る田辺氏

 この渓も落差のない平瀬が続いているので、あまり源流といった雰囲気はない。ところが、なにげに流した私の目印にアタリが出た。釣れたのは居つきの7寸のメス岩魚だった。田辺氏と二人で「あなどりがたし矢田川」「意外と釣れるんじゃない」などと言っていたのだが、やはり以後良型は出ず。堰堤下を狙うも浅すぎて魚が入っていない。釣り人は多いし、あっという間に時間になってしまった。
調理
晩飯を作る瀬谷氏(左)と田辺氏

 結局午後は矢田川組1尾、夏屋川組ゼロ、達曽部沢組数尾の不漁に終わってしまった。本日の宿は素泊まり1980円也の安庭ノ沢鉱泉だ。ここはかなりの山奥にあり、静かな良い宿だった。入ったときに支払いを済ませておくので、早朝の出発もOKの釣り人向けの宿である。岩魚汁などの豪華な食事を取り早々と就寝した。




27日(日) 天候:曇り

 今日は5時に起きて出発の予定が全員寝過ごしてしまい、出たのは7時過ぎ。検討の結果、今日は御山川に入渓することになった。しかし、時間も遅く先行者が多そうである。会長は1人残って後2日釣るので、今日はやらないと言っている。中流部に渡辺氏、高野氏、瀬谷氏が入り、私と田辺氏は上流部に入渓することになった。

 林道を上流に向かい、何本かの沢を渡り車を止めた。渓に下りるとやっと源流らしい流れがそこにあった。昨日よりは水量は減っているので期待はできそうである。しかし、入渓点からしばらくはアタリがない。ようやくアタリが出だしたのは1時間位釣り上ってからだろうか。ただ、型は良くない。せいぜい6寸程である。餌はドバミミズなので、小物だと口に入らないのか、上げると落ちてしまう。
御山川
御山川上流部の流れ

 下流部と比べるとポイントは多いのだが、流れの緩いところにしか着いていないようである。7寸1尾を私が上げた後、落ち込みから続く流れが岩盤の脇を通るところで田辺氏にアタリが出た。充分待ってからアワセたのだが、バレてしまった。今のは7寸程だろうか。同じところを流すとまたアタリが出た。2人で「おおっ、きてるよ、きてるよ」と笑いながら待った。「これも小さいよ」と田辺氏。「そろそろ、アワセるか」と1分程待ってからアワセをくれてみると結構良型だった。タモに納まったのは今回最大の9寸岩魚だった。岩手まで来て9寸が最大ってのも情けないが、これが現実である。
 その辺りからだんだんとアタリが出るようになってきた。その先のぶっつけになっていて、流れの巻いているところで私が6寸を2尾。これはリリース。田辺氏にも何尾か釣れているが、みんな小さい。もう時間があまりないので飛ばしていくと滝が出現した。しかし、釜が浅い。1段目に田辺氏が入り、2段目に私が入る。2段目の滝は2つに別れているが、手前は流れが吹き上がっていて厳しそうだ。奥のほうが浅いが一応釜があるのでそちらをやってみる。 ただ、高さがあるうえに手前の滝からの流れが渡れないので、投入は勘でしなければならない。もしも、大物が来ても抜き上げられるように2号の仕掛けにかえてブドウ虫を振り込んだ。一発でアタリが出た。抜き上げると吹っ飛んできたのは7寸岩魚。この滝でこれじゃな〜、とがっかりしてしまった。ちょうど時間となり集合場所に戻ったのだが、下流組はキープサイズゼロという貧果に終わっていた。

 昼飯には名物「ひっつみ」を食べた。これは「すいとん」みたいなもので、歯ごたえもあり野菜も沢山入っていて美味だった。皆さんも機会があれば是非食べてみてほしい。それと、もう一つの名物は蜂蜜だ。その蕎麦屋で養蜂をやっているらしく、沢山の種類の蜂蜜が置いてあった。試食してみると、それぞれ味に違いがありアッサリしたのもあれば、コッテリしたのもあった。きっと好みの味が見つかるだろう。

 それにしても岩手はこんなにも釣れないのだろうか。大型はあまり出ないと聞いていたので期待はしていなかったが、それにしても魚が少ない。これが今年の水害による影響なのか、例年もそうなのか初めて来た私にはわからない。もし、水害によるものだったら、後2、3年は期待できないのではないだろうか。


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