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 福島県 伊南川


  96/09/21(土)

  田辺、中村、高野


   天候 :雨後曇り時々晴れ
   気温 :朝 12度
   水況 :平水 濁り無し



Text  :高野 智
Photo :田辺哲、高野智 

 午前1時、雨が降っている中を田辺氏との待ち合わせ場所に着き、荷物を積込み中村氏を拾う為にすぐに出発する。全然寝ていないため、疲れが残っている。中村氏の家には1時15分に到着したが、なかなか出てこない。ちょっと早すぎたようだ。結局1時30分頃に檜枝岐に向けて雨の中を出発した。台風17号が接近しているため、今日は1日中雨かもしれない。そのほうが釣れるのだが、気分的には晴れているほうが全然いい。

 久喜ICから東北道に乗り、ひたすら北へ向かう。田辺氏の話によると3時間30分程で着くということだが、日帰りではちょっと辛い距離である。今日は連休初日だが、さすがにこの時間に走っている車は少ない。こんな時間に走っているのはトラックか釣り人だけである。そう考えると全部の車が渓流釣りに行くように思えてくる。私達は「あれも釣りだ!」と冗談を言いながら、東北道を走り続けた。

 田辺氏の案内で入渓点の近くに車を止める。どうやら1番乗り出来たようだ。辺りはまだ暗く時折通る車がいなければ非常に静かだ。私達は準備を整え、明るくなってきた道路を下っていった。

 入渓点は結構急斜面になっている。全然寝ていないので疲れがたまっていて、足元がふらふらする。なんとか木に掴まりながら川岸に降り立った。そこはいきなり大淵になっていた。想像していたより水量が多く、押しも強そうだ。ここで2手に別れて中村氏は下流に入り、私達は上流に向かうことにする。こんな大淵には大物が潜んでいそうだが、私の竿には全然当たりがない。田辺氏は1尾上げたようだ。大淵を越える為に岸をへつる。こんな所に落ちたら首まで浸かってしまうだろう。まさかそれを経験する人間が出るとはこの時は思いもしなかったが・・・

田辺氏 田辺氏の話だと、この川は押しが強いのでたるみでないと釣れないという。しかし、石裏のたるみやトロ場を流してみるが、全然当たりが無い。そうこうしている内に、田辺氏が27cmのイワナを上げるのが見えた。調子がいいようだ。中村氏が追いついてきたので聞いてみると、24cmくらいのイワナを上げたらしい。こりゃまたボウズなのは私だけかという思いが脳裏をよぎる。しばらく上流に向かうが、やはり当たりは無い。昼近くなってきたので、いったん下り昼飯にする。どうも今日は足首に力が入らなくて、何度も転びそうになった。

 昼飯の後、目の前の淵を攻めるが全然駄目である。田辺氏が上流の淵でイワナを1尾上げてきた。しかし、ヘツリの途中で川に落っこち、胸まで浸かったらしい。中村氏も支流の堰堤下でヤマメを出した。私はだんだん気が滅入ってきた。こうなると流し方も雑になり、ますます釣れなくなってしまう。あまりに当たりがないので、仕掛けを0.2号にして針も顎無しにしてやってみた。するといきなり当たりがあった。しかし、そうとうスレているらしく、全然針ががりしない。しかたがないので再び釣り上がることにした。

 朝一で竿を出した淵にもう1度チャレンジしてみる。餌が手前の岩影にすうーっと沈んで行くと、目印に確かな変化があった。すかさず合わせると19cmのヤマメだった。ようやく1尾が出た。これで気分が楽になった私は、さらに上流に上がっていった。28cmの岩魚

 田辺氏のちょっと上流に立った私は、対岸のヘチにできたタルミに狙いを定めた。ちょうどいい底石があり、いかにも魚が潜んでいそうである。私の振り込んだ仕掛けは流れの底に入り、ポイントに向かっていった。その目印に変化が出た。すかさずアワセをくれる。その瞬間魚は上流に走り出した。凄い勢いだ。私は竿を立て何とか魚を止めようとした。すると今度は下流に向かって走り出した。「マズイ、流れに乗られると切られてしまう。」そう思った私は竿を寝かし、こちら側の岸に寄せようとした。しかし流芯があるので簡単にはいかない。それでもなんとか近くに寄せ、タモに入れたときはホッとして力が抜けてしまった。見事なイワナである。早速暴れるイワナをしめようと掴んだら、ギッー、ギッーと鳴いた。初めて聞くイワナの声だ。メジャーをあてると28cm。残念、尺はなかった。しかし、今日1番の良型だ。田辺氏もタモに入るまではヒヤヒヤだったようだ。それと他の人のやり取りを初めて見た、といっていた。

 この1尾で今日は満足した。あれほど午前中はつまらなかったのに、釣り人なんて現金なものである。また来年、梅雨明けぐらいにこの渓に来てみたいものである。


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