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 和賀仙人に会えた旅

 
岩手県 和賀川支流
 
釣行者:岩田会長、渡辺副会長(健さん)、田辺 哲

 釣行日:1999年6月5日(土)、6日(日)

Text&Photo:田辺 哲 

和賀仙人に会いに・・・

 シーズンも最盛期を迎え仕事がますます手に付かない。(いつもだけど…。)しかも私の少ない経験では6月は大物月間!。毎週遠征!。いつもやさしい奥様には申し訳ないが6月は未亡人になってね…。(実は9月まで予定満載なのだが。)

 さてさて、今週実は会長と二人で只見の気になる沢に渡船で釣行の予定だったのだが、顧問の川上さんには「サカナいねーよ。」と言われるし、寸前になってまだまだ雪渓に閉ざされてるという情報が入ったため急遽予定変更。どこにしようかねえ、会長も悩んでいるが、私がふと「和賀川へ和賀仙人に会いに行きましょうか?」の一言で出発当日に決定した次第。

 こっち方面はだれも入ったことがなく、どこがいいのか全く情報なしなので「こりゃあまたまた高い高速代払って道路公団の懐に貢献するだけかねえ…。」 副会長の健さんも土日は空いてるってんで、いつもの渓道楽号(健さんのワンボックス)にて出発進行!。

 入渓場所は道中で相談しようかな…。と思っていたが、蓮田SA地点にて会長は後部座席で永眠状態。健さんは、いつもどおり温泉旅行に行くみたいに呑気に運転…。これでは温泉道楽になっちゃうよん。

 結局北上西ICを下りたところで作戦会議をして、唯一まじめに下調べ(といっても某釣り雑誌だが。)した私の意見で、テキトーな関東では無名なところに決め、仙人駅近くの「伊藤釣具店」にてお願いしておいた日釣券を受け取ったのだが、会長が「おかしいなあ、券の裏に入れ食いポイントを書いといてくれるように頼んどいたんだけどなあ…。」そんなもん書くわけねーでしょ!。この時点で、私の釣欲はすっかり殺がれていたのはいうまでもなく、「もうどうにでもなれ!」と林道をガンガン攻めまくったのであった。

 テキトーな場所に橋があり、私のか弱い足でも下りられそうだったのでそこから釣り上がる。案の定イワナなど釣れる訳も無くハヤ君の歓迎を受けた。(早くやめて他に移動すっかな。)と思いながら淵尻を流すと8寸イワちゃんが釣れた。

尺物爆釣!

 あー、これで埼玉に帰れるよん。と何気に河原に目をやると、明らかにいつもよく目にするシカさんとは違う足跡が…。そうなんです、ここは「森のクマさん」の生息地だったんですねえ。やっぱ「森のクマさん」と「イワナ君」は仲良しなんだんなあ。感心感心。「会長!健さん!一応いるみたいだよー。(クマさんもね。)」会長「よっしゃーいっちょ本気でやっかな。(えっ、クマさんと格闘すんの?)」本気を出したときの会長はホントに凄いのだ。またたく間に8寸〜泣き尺クラスを3尾程上げる。私もなんとか9寸クラスを2尾程追加したとこで会長が寒い寒いとたき火を始めた。いつもは無心で釣り上がる会長もどうやら余裕のようだ。いまだハヤ君に悩まされている健さんに対する思いやりか?。こんな時はすかさず遠慮せずに竿をだすのがヘタッピーが釣るための鉄則なのだ。たき火地点上手のガンガンに得意?の長竿で攻めると一発で良型が…。会長に「来たよん」と抜き上げると立派な31cm!。ここんところ「現認者」とアダナがついている私にとっては汚名返上の1 尾であった。

 健さんも、いつもは河原で寝る時間なのに真剣にやっている。しかし、今日はどうもチビちゃんばかりに好かれているようだ。複数の釣行において自分だけカヤの外になると、とっても不機嫌になる方もいるようだが、健さんは全くそんな素振りを見せないのがとってもうれしいし、また一緒に来ようと思わせる。そういう姿勢がオサカナの食欲を増進させるのか、殺気を消すのか、やがてキープサイズを見事に取ったのでみんなニコニコ元気ハツラツ○○○○○C!。

 上流に遡行するにしたがって渓は狭まり、みんな大好き!ゴルジュ地帯に突入した。私は、もう満足していたので竿をしまって2人のあとからのんびりついていくと、なにやら会長が悔しがっている。そばにいくと「しまったー!1号ハリスが切られたよ。でかいのがギラッとしたんだよ。」どうやら結び目から切れた様子。健さんもあわてて大物用の仕掛けにはりかえている。会長もあわててハリス交換。たまたま仕掛けを繋いでいた見物人だった私が、なにげにドバちゃんを流すと2投目でかかってしまった。トロい淵で来たのでそれほど大きいと思わず、またタモもないので無造作にハンドランディングするとなんと35cmもあるではないか!。そうなんです、高野会員との「ハリス切れ横取り事件」の災難がまたまた会長の身に降りかかってしまったんです。しかも尺オーバーの大物を…。これでさすがの会長もスネオちゃんになって、足早に上流を攻めにスッ飛んで行ってしまう。「ちょっとマズいんじゃない?。」と健さん。「いいんですよたまには。だってちょうど1年前の朝日で、会長ったら私にポイント譲ってくれるっていいながら、私が大物用の仕掛けに張り替えて、淵尻の番兵ちゃんから 攻めようとしていたら、いきなり上手にのぼり一等地に入れて尺1寸を取っちゃったんだから。しかも私はタモ取りと現認者ですよん。」

 そうなんです。これは正当な仕返しなんです。ちょうど1年前の同日の仕返しができたんです。全くこんなことが起ると、普段は信仰心のカケラもないのに神様っているのね。と思ってしまう。

 しかも「念のためもう一投」と健さんが同じポイントにいれるとまたまた大物の引き。これも尺上31cm!。

 今度は会長がひとりカヤの外。しかも、しかも、さらに追い討ちを掛けるようにゴルジュを抜けたちょっとしたトロで後ろからのんびり見てると、健さんがなにやら騒いでいる。あわてて飛んでいくと一人では取り込めない状態だ。急いで健さんの腰のワンタッチタモを抜いて取り込みを手伝おうとすると、なんとタモが開かず全く使い物にならない。しかたがないのでまたまたハンドランデインを試みる。こんな時、子供の頃に親戚のオジサンに連れてってもらった「鯉の手づかみ大会」の経験が2度も生かされるとはね。やっぱ子供は外で遊ばなきゃ。ファミコンの釣りゲームなんか役立たねーっつうの。

現忍者ナベちゃん

 やっぱり私は現認者だった。メジャーをあてると36cm!。今日はどうかしちゃってる。いつもは釣れない渓道楽の釣行なのに。しかも会長だけ…。あの会長だけ…。あんなに釣り名人の会長だけ…。

 決して会長も釣れてないのではないのだが、いかんせん計ったように泣き尺ばかりなのだ。そういえば先週も山形で泣き尺ばかりっだったと言ってったっけなあ。「現認者の田辺」もつらいけど「泣き尺の岩田」は名人にとってはもっとつらいだろう。会長も決してキレているわけではないが、渓は開けすぐに林道の橋が…。しかも河原には数日前の釣り人の足跡。すでに昼時。万事休す。

 ところがやっぱり名人だった。橋上の、いかにも釣れなさそうな渓相で良型をかけた。「うーん。また泣き尺かよ。もう泣いちゃうよ。」すぐに現認者が駆けつける。念入りに念入りに測定すると30.2cmやったー!。これでみんな納竿できるよん。

 帰りの林道歩きは足取り軽やかルンルン気分。3人で「今どきこんな楽なところで、こんなことないよねえ。」「こんなこと10年に1度もないよ。」と健さん。「それじゃあもう次回は会長、墓の中だよ。」(ジョーダンですよ。)

 予定では、翌日探る場所でテンバる予定だったのだが、湯田町の「ふるさと記念館」で入浴すると「此処いいねえ。いくらで泊まれんのかねえ。えっ2食付きで5500円!」そりゃあ安いよ。此処泊まろうよ。なにもヤブ蚊と一緒に寝るこたあねーよ。」と先輩方がおっしゃるので私もお付き合いさせていただきました。

 さてさて翌日ですが、どーしても会長が、「前日釣り終えたとこからやりたい。」とおっしゃるので車止めまで御見送り。残った二人は下流部で遊ぶも昨日とうって変わってダメ。やる気もそんなにないので足早に温泉に向かう。そこでさんざん湯に浸かりビールで乾杯のあと約束の時間まで朝寝を決め込む。地元のオジチャン、オバチャンもみんな酒、つまみ持参で井戸端会議。渓流通いではよくある風景。「いいなあ、東北は。自然の厳しい場所で苦労も多いんだろうに、みんななんて素敵な笑顔なんだろう。オレ街場暮らしだけど年取ったらあんな笑顔ができんのかな。」

 待ち合わせ時間になっても会長はやってこない。「こりゃあ釣れてんね。」と話しているとチリンチリンと熊よけの鈴の音。顔に疲れはみえるもののニヤニヤしてるのでビクを覗くと尺級が。32cmで締めてくれました。

 今回の場所は、釣り具店のご主人によると放流は一切してないので良い話は聞かないと言うし、地元の山菜取りの人も「ここはいないよ。」という忘れ去られた川のようだ。しかしそこはなんといっても和賀川水系だ。自然河川ならたくましいイワナは遡上するのだ。そして時期が合えばこんなこともある事を身を持って教えられた。


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