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ガサガサ遊ぼう 魚類調査

栃木県鹿沼市 大芦川周辺

2004.03.21






Text  : 高野 智
Photo : 荻野 高野

 私が小学生だった頃、昭和40年代。というと今から30年も前。近所にはまだまだ雑木林や池や沼があり、チョウやトンボ、魚などとても沢山いました。男の子は虫取りや魚釣りといった自然を相手にした遊びを、思う存分暗くなるまで続けたものでした。それがだんだんと池や沼は埋め立てられ、雑木林は切り開かれて、マンションや建売住宅へと変わり、気が付くとチョウもトンボも魚も居なくなっていました。今じゃあっちを見ても、こっちを見てもコンクリートの建物ばかり。今の子供たちが遊ぶ場所は綺麗に整備された公園か、さもなければTVゲーム・・・。これでは画一化された子供時代の思い出しか残らない気がするのは私だけでしょうか?
 最近そんな気持ちが日に日に強くなっていたところへ、渓道楽の会友でもあり、栃木の「大芦川自然クラブ」にも所属している荻野さんから「大芦川周辺で、網でガサガサと魚類調査するんだけど、来ない?」と誘いがかかりました。
 荻野さんとは去年も子連れでキノコ採りにも行っていて、子供同士もとても仲良し。二つ返事で参加決定です。

 当日朝、バタバタと子供3人を起こし、東北道鹿沼ICを目指します。2月にも大芦川の雪上トレッキングに参加していたので、待ち合わせ時間には余裕で着くなと思っていたのですが、なぜか遅れて到着。皆さんを待たせてしまい申し訳ありませんでした。
 挨拶も早々に早速ガサガサやる現地へと向かいます。第一ポイントは山里の雰囲気に包まれた、田んぼの用水路です。 溜まりを覗くと小さな魚影がスイスイと泳ぎ回っています。

 大人たちは早速ウェーダーを履いて、網を持って水に入ります。自分もウェーダーを履いて一緒にやりたくて仕方がなかったのですが、長男の翔平(3歳)がとんでもない腕白坊主。こいつときたら全くジッとしていません。流れを覗き込んで落ちそうになるわ、網を持って自分でも魚を捕ろうとするわで、危ないったらありゃしない。お姉ちゃんの歩美(8歳)と朋美(5歳)は女の子ということもあるのか、それなりに落ち着いていて、「石橋を叩いて渡る」性格なので安心していられるのですが、翔平ときたら頭で考えるよりも、まず体が動くタイプ。夏だったら川に落ちて濡れるくらい気にしないのですが、まだ水も温んでない季節。落ちたら「冷たい」だの「濡れた」だのうるさいこと言うに決まってますから。そんな感じで私は、もっぱら翔平の監視と写真撮影に徹していました。

 






早速、調査開始!

さあ何が捕れるかな?
 








すぐに数種類の魚が捕れました。
なんていう魚だろう?







荻野さんは写真記録係。
一種類、一種類撮影します。

おっ、翔平君、何やら水槽に興味を持ったようです。手に持って調べています。

 さて肝心のガサガサの成果ですが、これが面白いように捕れます。おなじみのドジョウを筆頭に、オイカワやウグイ、さらにはヤマメの小さいのまで。こんな小場所にこれほど多くの魚がいるとは思いませんでした。
 子供たちは捕れた魚を入れたバケツを珍しそうに覗き込んでいます。すると速攻で行動開始する翔平君。網をバケツに突っ込み捕獲しようと夢中になっています。やっぱり男の子ですねぇ。

おりゃ、おりゃ!
すばしっこい奴め。
捕まえた魚は放すんだよね。お父さん英語で言ってたな。
えぇと、リーバイス・・・じゃなくて、フリース・・・でもないな。
なんでもいいや! バシャバシャ・・・。


 次に向かう第2ポイントは先ほどとは違って護岸されていない用水です。両岸には草が茂り、自然の面影を残しています。当然、先ほどのポイントよりも沢山の種類の魚が棲んでいると予想されます。網を入れてガサガサと足でかき回すと、捕れること捕れること。泥底なのでドジョウが沢山います。知らなかったのですが、ドジョウにも何種類もあるそうなんです。子供のころは、「ヒゲがあって細長いのはみんな同じドジョウ」と思っていましたが、良くみると体側の模様も違い、ヒゲの本数も違うそうです。他にもヤゴやカエルといった、子供の頃によく捕まえた虫たちも棲んでいました。そして何十年かぶりに再会したのはミズカマキリ。陸上にいるカマキリそっくりなのですが、実はカメムシの仲間。カメムシ知ってますか? そうあの臭い匂いを出す虫です。カメムシというと思い出すのはスキー場の民宿。暖房をつけて部屋が暖まると春が来たと勘違いしてどこからともなく出てくるんです。たまにポトリと落ちてきたりして、油断できません。寝ているときに口の中にでも入ろうものなら、しばらくは匂いが残ってそれはもう大変なのだそうです。
 話が脱線してしました。ここではヤマメはいなかったのですが、一番の大物キンブナが捕れました。じっくり観察すると、キラキラと輝き綺麗な色をしています。ゲンゴロウブナやヘラブナのほかは全部「マブナ」かと思っていたら、「マブナ」っていうのは「キンブナ」「ギンブナ」の総称だったんですね。また一つ賢くなりました。









捕れた?

どうかなぁ・・・。










いたいた、ドジョウだよ。









子供の頃って、こういうのとても楽しかったですよね。

 しかしというか、やはりというか、ここでも翔平君大暴れです。水際に行って網で掬ってみたり、水門の上の橋を駆け回ったり、危なくて目を離せません。あまりに酷いので「少しはおとなしくしてろ!」と叱ったのですが、イジけて一人で車のほうに行ってしまいました。そのほうがこっちも楽でいいわい!










おっ、こんなところに魚が。
こんな狭いところに入って窮屈そうだな。ちょっと出してやるか。

 気が付くともう昼をすぎていました。そろそろガサガサも終わりの時間です。捕まえた生き物たちを、みんなで川に返してあげます。翔平もドジョウを放して機嫌が直ったようです。子供って単純ですね。


 実際に調査してみて分かりましたが、沢山の生き物たちがこの自然が残る水路で暮らしていました。この小さな水路にこれほどまで多種類の生き物がいるのは驚きでした。そしてこの中でも食物連鎖が成り立っているのですね。

 大人になってからも、ガサガサはとっても楽しい遊びです。すっかり都市化して自然が無くなってしまった街に暮らしていると、心まで乾いてきてしまいます。たまには子供を連れて、こういう遊びをするのも悪くないものです。次はさいたまでも比較的自然の多く残る見沼区あたりでやってみたい気もします。

今回の調査で捕まえた水棲生物たち                                             写真提供:荻野

オイカワ

ヤマメ

ウグイ

シマドジョウ

サワガニ

ミヤマカワトンボ(幼虫)

左から マダラカゲロウ(幼虫)、モノアライガイ(卵)、ガガンボ(幼虫)

左から カワニナ、マダラカゲロウ(幼虫)、サナエトンボ類(幼虫)

左から カワゲラ(幼虫)、ヒゲナガカワトビケラ(幼虫)、モンカゲロウ(幼虫)

ホトケドジョウ(絶滅危惧種 TB類)                     ドジョウ

キンブナ                               ツチガエル

 ※ 今回の調査は許可を得て行っております

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